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- ID:
- 27032
- 年:
- 2013
- 月日:
- 0305
- 見出し:
- チェーンソーアーティスト・小林哲二さん(42) 木への感謝込め自然を彫る
- 新聞名:
- 産経新聞
- 元UR(アドレス):
- http://sankei.jp.msn.com/region/news/130304/tcg13030411360004-n1.htm
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
東武鉄道日光線新鹿沼駅(栃木県鹿沼市鳥居跡町)の改札で乗降客を出迎える松尾芭蕉。
ほぼ等身大の木彫り像は、チェーンソー(動力式のこぎり)1本で彫り込んだチェーンソーカービングの作品だ
5月末までこの場所に置かれ、その後は芭蕉の句碑がある屋台のまち中央公園掬翠園(きくすいえん)(同市銀座)に移される予定。
穏やかな笑顔が鹿沼への来訪者を出迎える。
鹿沼が芭蕉が立ち寄った宿場であることと、この地の地場産業の木工業をアピールしている。
鹿沼地区木材需要拡大協議会などの要請による芭蕉像制作は2度目。
平成23年に制作した、腰掛けた芭蕉とややかがんだ姿勢の弟子・曾良(そら)の像が、まちの駅・新鹿沼宿(同市仲町)にある。
「鹿沼に来て休息を取ったときの場面を思い浮かべ、曾良は芭蕉に寄り添って会話している姿勢」を彫り上げた。
そして今回は「奥の細道を歩いた芭蕉が思いをはせた東北の復興への願いを込めた」
作品は自然をテーマに、動物を題材にすることも多い。
一本の丸太を彫り進め、イメージへ近づいていく作業は「慎重に少しずつそぎ落とすように、中から“彫り出す”感じ」だという。
芭蕉像は2日をかけたが、イベントではチェーンソーで豪快に丸太を削って制作する過程そのものを見せるデモンストレーション
もあり、小さいものだと1時間程度で制作する場合も
チェーンソーアーティスト・小林哲二さん(右)と松尾芭蕉の木彫り像 =栃木県鹿沼市の東武鉄道日光線新鹿沼駅
短時間の制作でも細かな点に細心の注意を払い、写実的にリアルな造形を表現する。
強く意識するのは骨格だ。
「子供が小さいときは動物園に連れて行き、自分が一生懸命、動物を見ていた。
どこから首が出て、どこから足が出ているか。
ずれると完成したときの違和感はぬぐえない」
宮大工だった祖父の仕事場で端材やカンナ、くぎなどで遊んだ経験もあり、木や物を造ることに対する関心は高かった。
35歳のころ、チェーンソーカービングに出合い、「自分の中でスパークしたというか、びびっときた」。
和歌山へ行き、第一人者、城所ケイジさんに基本を学んだ
日光、鹿沼の山々は商品価値の高い良質のスギ材の産地として知られる。
チェーンソーカービングは間伐材の有効利用とも考えている。
制作はまっすぐな柱材ではなく、根曲がりなど癖のある木や使われない部分を使う。
「根から先端まで一本の木。
40年、50年とそこに立ってきた。
中には自分より大先輩
もいる。
人間の都合で捨てたりせず、使いきりたい。
チェーンソーカービングは山に開かれた窓。
大きい窓ではないが、山の状況がちょっと見える」
木々に対する感謝、畏敬の念が作品に込められる。
〈こばやしてつじ〉昭和45年9月、宇都宮市生まれ。
大学卒業後は製材会社勤務など建築業界で働き、チェーンソーカービングを始めてから林業に転身。
平成18年ごろから大小500体近く制作している。
鹿沼市在住。
家族は妻(42)と長男(12)
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