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- ID:
- 26117
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1207
- 見出し:
- 中国、後を絶たぬ不法木材取引 国境地帯などで大量伐採
- 新聞名:
- 産経新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.sankeibiz.jp/macro/news/121207/mcb1212070501000-n1.htm
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- 記事
-
ミャンマー北部サガイン管区で、中国企業が中心となって開発を進める銅山をめぐり、開発中止を求める地元住民の抗議デモを治安当局が強制排除し、多くの負傷者を出した事件は、ミャンマーの現政権が、中国との関係を依然、重視している実態を示した。
中国は現在もミャンマーから銅や天然ガスだけ
でなく、チーク材などの木材も大量に輸入し、ミャンマー経済を支えている。
ただ、中国は、必要とする大量の資源を手に入れるためには、手段を選ばない。
天然ガスはともかく、木材などでは不法輸入が後を絶たない
◆半減した森林面積
ロンドンに本拠を置く環境調査機関(EIA)が先月末に発表した世界の木材取引に関するリポートでは、中国が不法木材取引の中心になっていると指摘。
とくに隣国ミャンマーからは、大量の木材を不法に輸入しており、ミャンマー側の山々に荒廃をもたらしていると批判している。
国連環境計画(UNEP)と国際刑事警察機構(INTERPOL)の2010年の調査によると、毎年、1億立方メートル分の木材が不法伐採され、熱帯地域の国々の木材のうち50~90%が不法取引され、その取引額は300億ドル(約2兆4700億円)から1000億ドルに上るという。
しかし、世界各国が木材の不法取引の禁止に取り組むなかで、中国の取り組みは遅い。
とくに問題となっているのがミャンマーだ
EIAリポートによると、かつてミャンマーは国土の48%が森だったが、今や24%にまで半減し、ミャンマーはいまや世界でもっとも森林消滅が進む国の一つだとして、危機感を示した。
最大の原因は中国との取引だ。
中国によるミャンマーからの木材の輸入量は、1990年代後半から急増し、97年に約30万
立方メートルだったが、05年の160万立方メートルと5倍以上になった。
その大半が不法伐採と不法取引だったことから、06年にミャンマー・中国両国は木材の取引については、すべてヤンゴンから船で運ぶことで合意。
その後、不法木材取引は、一時的に下火となっていた。
◆アフリカに触手
しかし、国境取引はまもなく復活し、12年上期に中国・雲南省との国境を通過した「違法木材」だけで50万立方メートルに上った。
これは日本の高知県の木材生産量(11年)に匹敵する。
リポートによると、雲南省とカチン州との国境地帯では、雲南省側は伐採が禁止され、森林が保護されているために青々としているが、ミャンマー側はあらかた伐採され、はげ山が目立つという。
さらに、木材の国境貿易が禁止されているにもかかわらず、実際には中国国境で、輸入税さえ支払えば、おかまい
なしだとしている。
ミャンマーから運び込まれる木材は、キンコウボクやハンノキ、ゲッケイジュ、ツガ、カシやモミなど。
さらにワシントン条約で保護されているはずのヒマラヤイチイで作った家具までミャンマーから中国に送られていた。
カチン州のある長老は、EIAの調査員に、「ミャンマーが中国にとってのスーパーマーケットなら、カチン州はコンビニエンスストアだ」と語ったが、ミャンマーと中国の現在の関係の一端を表しているようだ
ただ、ミャンマーからの木材輸入はここに来て、アフリカ産に代わりつつあるという。
ミャンマー国軍とカチン州の武装勢力との対立が激化し、木材の供給が減ったことや、経済改革に伴いミャンマー国内の輸送代金が高騰しているためだ
EIAは、中国政府が自国については環境を重視し、伐採抑制や植林計画を進めているにもかかわらず、他国での不法伐採や不法輸入を続けることは「森林破壊」を世界中に輸出しているのと同じだ、と厳しく批判している。
(編集委員 宮野弘之)
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