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    ID:
    25056
    年:
    2012
    月日:
    0821
    見出し:
    開発に1年! 特殊形状の刃が生んだ紙のように薄い木のカップ
    新聞名:
    日経トレンディ
    元UR(アドレス):
    http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20120809/1042415/?ttr_img&rt=nocnt
    写真:
    【写真】
    記事
    光にかざすと透けそうなほど薄い――。
    「KAMI Glass」は、厚さがわずか2mmの木製カップだ。
    表面が滑らかで厚みは均一、佇まいが非常に美しい  一見、観賞用の工芸品にも見えるが、日用品としての実用性も高い。
    冷たいものから熱いものまで入れられるだけでなく、熱伝導率が低いため、熱しにくく冷めにくいのだ。
    触り心地が優しく、木のぬくもりを感じられるのも醍醐味。
    ついつい手に持っていたくなる。  この“極薄”木製カップを作り出したのが、家具の街、北海道旭川市にある「高橋工芸」。
    主にロクロ挽きによる木製テーブルウエアを手がける工場だ。
    驚異的な薄さに木を削り上げる技術の秘密を探るべく、早速旭川に飛んだ KAMI Glassはサイズ違いで「ワイド」「ロング」「フリー」などがある。
    取っ手の付いたマグカップの他、プレートもラインアップ。
    価格は2100円~ [画像のクリックで拡大表示] 木の厚さは約2mm。
    口当たりは非常に優しい [画像のクリックで拡大表示]  高橋工芸は、旭川の郊外にひっそりとあった。
    出迎えてくれたのが、高橋工芸の2代目、高橋秀寿氏。
    KAMI Glassを生み出した木工作家だ  「木を薄く削り出してカップを作ったらどうなるのかという素朴な興味から開発に取り組んだ」と高橋氏。
    木製のカップといえば、薄く加工した木を曲げて重ね合わせる「曲げわっぱ」という技法はよく使われているが、ひと塊の木からロクロ挽きで削り出すには、技術的に越えなければならないハードルがあったのだ 。
    「構想から製品化まで1年以上かかった」と高橋氏は開発当時を振り返る。 木工作家の高橋秀寿氏。
    高橋工芸の2代目 試行錯誤の末に辿り着いた削り出し用の究極の刃  “極薄加工”の最大のハードルとなったのが、削る際の「振動」だ  ロクロ挽きは、材料となる木材を台座に固定して回転させ、刃を当てて削るのが基本。
    KAMI Glassも作り方は一緒だ。
    ただ、「従来の刃では、グラスの中をくり抜く際に振動が大きくなり、薄く均一に加工できない」と高橋氏は語る。
    「深い器ほど、手元から刃が遠くなるので、振動がより大きくなる」(高橋氏)  そこで取り組んだのが、徹底的な振動対策。
    刃物メーカーと協力して刃の形状を変えては試し、変えては試しの繰り返し。
    1年もの歳月をかけてようやく均一に加工できる特殊な形状の刃を作り上げた。
    「この刃が加工の肝。
    撮影は勘弁してください」(高橋氏)と語るほど重要なのだ。
    刃には、ダイヤモンドでし か磨げない非常に硬い材質を使っているのも特徴。
    この独自開発の刃のおかげで、わずか2mmという極薄ロクロ挽き加工が可能になった。 荒削りしたものを自然乾燥し、さらに乾燥機に入れて水分を飛ばす。
    その後自然の水分を適度に吸わせて使う [画像のクリックで拡大表示] 一つ一つロクロに取り付けて加工。
    一気に削り上げる [画像のクリックで拡大表示]  削り出し後は丁寧にヤスリがけを行い、食器用のポリウレタン塗料でコーティングする。  ここにも木の質感を大切にする高橋氏のこだわりがある。
    「白くて美しい北海道産のセンの木の質感をいかしたい」(高橋氏)と、一般的なウレタン塗料よりもツヤを抑えたものを使っているのだ。
    「作るものによってツヤ消しの度合いは変えますが、KAMI Glassでは『つや消し150%』という非常に光沢の少ないものを特注で作りました」(高橋氏)。
    その塗料を5日~1週間かけて4層塗り重ね、ようやく完成だ  完成品は、一見塗料がかかっていないかのような自然な仕上がり。
    むしろ、“ナチュラルメーク”によって何もしない木よりも美しさが増した印象さえある。
    手に持つと木の質感もしっかりと感じられる。
    使用後に乾燥させるといった基本的なことさえ守れば、長持ちするのも魅力だ。
    「塗装がはげても塗り直しに対応し ます」(高橋氏)とのことなので、永く付き合える。 ヤスリで表面を滑らかに仕上げる。
    木目が非常に美しい。
    ヤスリがけ後には、食品用ポリウレタン塗料でコーティングして仕上げる [画像のクリックで拡大表示] ブレークの転機は、ナガオカケンメイ氏との出会い  「KAMI Glassは05年に正式発表しましたが、当初は誰も関心を持ってくれませんでした」と高橋氏。
    見本市などをまわっても素通りされることがほとんどで、注目を集めることは少なかったという。  ブレークの転機となったのが、D&DEPARTMENT PROJECTのナガオカケンメイ氏との出会いだ。
    「日本の地域産業や伝統工芸に注目する『NIPPON VISION』に加わったことで、認知度が一気に高まった」(高橋氏)。
    3年ほど前からは海外からの引き合いも増えるなど、国内外を問わず注目を集めている。  高橋氏は、KAMI Glassを中心とした“飲むこと”に特化したKAMIシリーズに続き、“食べること”に注力した「Cara」シリーズ、日用品の「Kakudo」シリーズを展開。
    デザイナーとコラボレーションするなど、ロクロ挽きの可能性を模索し続けている。 KAMI Glassは北海道産のセンの木を使用。
    材料は1年分まとめて仕入れるため、1年間で作れる数は決まっている [画像のクリックで拡大表示] 「木のぬくもりを味わってほしい」と高橋氏。
    時間があればロクロの前に立っているという [画像のクリックで拡大表示]  「今後の目標は?」との問いに、「自社の山を持ちたい」と高橋氏。
    「低価格の輸入木材に圧され、旭川の林業は危機的状況にある。
    林業を応援して、旭川の良質な木材、木材加工技術を次の世代にも残したい」。
    「今、山を買っても、木材として出荷できるのは50~70年後ですけどね」とも笑顔で語った。
    日 本が誇る木材加工の技術と文化は、木を愛する職人たちによって守られている。 高橋工芸は1965年創業。
    当初は家具の部品製作を行っていた。
    今では木製テーブルウエアが主力。
    工場は旭川の郊外にあり、すぐ側を石狩川が流れる [画像のクリックで拡大表示] fff:

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