v11.0
- ID:
- 24866
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0724
- 見出し:
- 職人芸の“弾入れ”木箱…空き箱も重宝
- 新聞名:
- ZAKZAK
- 元UR(アドレス):
- http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120724/plt1207240722001-n1.htm
- 写真:
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- 記事
-
広島を訪れると、修学旅行の高校生らしき団体と出くわす。
「平和教育」コースを見学し、お好み焼きを食べて帰るのが定番のようだ
にぎやかな団体を横目に市内から西に向かうと、山口県の県境である廿日市(はつかいち)市にその工場はあった。
高見製函(せいかん)、ここは前回ご紹介した弾火薬メーカー中国化薬の下請け会社で、弾薬を納める木箱を製造している。
弾薬の製造は主に弾穀、発射薬、信管、填薬(てんやく)及び組み立てと、製造企業が分かれていて、それぞれ専門技術を持ち、相互に補完し合って形成されているのが特徴だ。
そうして出来上がった弾を入れる箱までが職人の手作りなのである。
「木は息をしています」
そう職人が語ってくれたように、木はまことに信頼できる素材だ。
運搬や保管などのプロセスにおいても、思いがけない発火の危険を孕む(はらむ)弾薬を母親のように守っている。
木箱は高湿度の日本の風土に適用でき、火にも強い。
木に火がつくまでに時間がかかるため、その間に消火することが可能となる。
しかし、それはただの木箱でいいわけではない
「非常に厳しい自衛隊の規格をクリアしなくてはなりません」
とにかく安全を確保しなければならない。
ここで作っているのは、ほぼ100%自衛隊用で、部品や素材の特殊性もあり他に民需品を請け負うことは難しい
木材で囲まれた工場で1つひとつ真剣なまなざしで木と向き合う人々がいる。
多くが20年以上の経験を持つ熟練工だ
その姿はまるで伝統工芸品作りで、素人目には「そこまで丁寧にする必要があるのか」と思ってしまうほどであるが、弾薬の形などを考慮した上で安全のため全てが必要な施しなのだ
こうした工程を経て出荷した後に、自分たちの木箱が自衛隊でどう扱われているのかは知る術もないが、毎年夏に行われる陸上自衛隊の富士総合火力演習に一度だけ行く機会に恵まれたことがあり、そこで見た光景が今でも忘れられないという。
「パソコンを置いている台がうちで作った木箱だったんです!」
空き箱になっても重宝されているのかと思ったら目頭が熱くなった。
どんな物でも懸命に作っている人がいる。
生まれたときからコンビニやインターネットがある世代には、そんな当たり前のことが忘れられがちだ
ある製造メーカーの幹部が、新入社員に「物は買ってくればいい」という感覚を改めさせることから教えなければならないと苦笑していたことを思い出す。
ぜひ、多くの学生たちに身につけてほしい感性だ
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