"2011年- 日本の出版事業の原点 |木製品、木、木工などのネット新聞情報 |木の情報発信基地
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    ID:
    23550
    年:
    2012
    月日:
    0222
    見出し:
    今に伝わる経版木6万枚、日本の出版事業の原点
    新聞名:
    日本経済新聞
    元UR(アドレス):
    http://www.nikkei.com/life/culture/article/g=96958A9C93819A91E3E7E2E0838DE3E7E2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;p=9694E0E5E3E0E0E2E3E2EBE3E7E5
    写真:
    【写真】
    記事
    印刷するために文字・図画などを彫刻した木版のことを版木というが、その数が約6万枚ともなると、版木の森に迷い込んだような気分だ。
    京都府宇治市の黄檗宗萬福寺の塔頭(たっちゅう)の一つ、宝蔵院の収蔵庫(鉄筋鉄骨3階建て)には、初代住職の鉄眼(てつげん)が1681年に完成させたお経の版木「 鉄眼版一切経版木」(重要文化財)や黄檗宗の典籍の版木などが保管され、いまも収蔵庫の一角でこの版木の一部を使ってお経が刷られている。 黄檗宗萬福寺・宝蔵院の収蔵庫。
    版木6万枚に囲まれ、摺り師が大般若経を刷り続ける(京都府宇治市)  「一切経」(正式には大蔵経)とは古代インドの梵語(ぼんご)を訳した漢文の仏典の総称。
    釈尊の教えを記録した「経蔵」、戒律をまとめた「律蔵」、経と律を解説する「論蔵」の三蔵から成り、鉄眼版のもとにした一切経は全6956巻とされ、大般若経・維摩(ゆいま)経・華厳経などが含まれる。
    一切経が日本 で最初に印刷されたのは慶安元年(1648年)ごろ。
    天台宗の僧・天海が徳川幕府の支援を受け、木製の活字を使って「天海版大蔵経」を印刷したが、これは少部数にとどまった。
    鉄眼はより多くの人の手に渡るようにしたいと、版木による印刷を考えたという。  ■「鉄眼経」完成までに17年間 3階建ての収蔵庫。
    版木を積む高さ2メートル以上の棚が並ぶ  鉄眼が一切経の版木作成で、基にしたのは明時代の中国から来日した隠元から譲り受けた経典。
    京都・宇治に萬福寺を創建した隠元を鉄眼は師と仰ぎ、版木作成の志を伝えると、隠元は所持していた一切経とともに版木の作成や印刷工房の用地として萬福寺境内の寺地を授けた。
    鉄眼はこの地に工房 を構える一方で、版木作成の資金を募って全国を行脚した。
    宝蔵院の現在の住谷瓜頂(うじょう)住職によると、作成事業の途中に洪水や飢饉(ききん)などの大災害が2度あり、鉄眼は2度とも版木作成のために寄せられた資金を災害の救済事業に振り向けたという。
    その結果、版木作成はあしかけ17年の 事業となり、1681年にようやく「鉄眼版一切経版木」(4万8275枚)を完成させた。  ■摩滅しにくいヤマザクラを使用 江戸時代に「一切経版木」を作成した鉄眼の像  版木材には、堅くて摩滅しにくい吉野地方のヤマザクラが用いられている。
    図書の出版は「上梓(じょうし)」というが、これは中国で版木の材に梓が用いられたことにちなむ。
    日本では材に適した梓を中国ほどには得られなかったため桜が用いられたという。  鉄眼版の版木1枚の大きさは縦26センチ、横82センチ、厚さ1.9センチで、両側に3センチ幅の縁がある。
    版木の表裏に経文を彫り、文字の配置規格は1行20字、横20行。
    行を仕切る縦のケイ線しか引いていないが、これが400字詰め原稿用紙の体裁の基になったとされる。
    また、隠元から譲り受けた一切経 が中国・明からもたらされたものだったため、彫られた文字の書体は「明朝体」。
    この書体は現在多くの新聞・雑誌で使われるが、鉄眼の版木で印刷された経典が各地の寺院に渡り明朝体の普及につながったと、宝蔵院には伝わっている。  ■近世の様子伝える反り止め形式 印刷した大般若経を荒縄にかけ、一晩乾かす  版木に詳しい奈良大学の永井一彰教授は「印刷史の観点から、鉄眼版は近世の版木の様子を伝える貴重な資料」と話す。
    永井教授によると、版木の様式は江戸の元禄期(1688~1704年)を境に違いがあり、その特徴の一つとして元禄期前は文字の彫りが深いことを挙げる。
    もう一つは版木が年月の経 過とともに反るのを防ぐために両端に付けられた木製枠(反り止め)の形式。
    元禄以前はこの木製枠を版木に釘(くぎ)で打ち付けていたが、元禄以後はスライドさせて着脱できる方式になったという。  ■今も大般若経を手刷りで作成 重要文化財の「銀眼版一切経」などを収める黄檗宗萬福寺・宝蔵院の収蔵庫  宝蔵院は収蔵庫の2.3階をすべて版木の収蔵スペースにし、収蔵庫の一角で今も摺(す)り師が版木を使って大般若経を手刷りしている。
    事業に携わる摺り師は「ここのものを扱って30余年」という大ベテラン。
    大般若経は版木が江戸前期にできて以来、2000部以上刷られたとされるが、現在も十分使える 摺り師は「版木の最大の敵はひび割れをもたらす乾燥。
    ここの版木は、刷る作業が適度の湿気を保つことにつながっている。
    版木の材の桜は堅く、版木に墨をひくためのブラシの方がどんどん摩滅する」と話す 【アクセス】JR奈良線・京阪電鉄宇治線「黄檗」駅下車、ともに徒歩約5分  宝蔵院収蔵庫の入館者は年間約900人。
    内訳は3分の1が出版関係者、もう3分の1が活字のデザイン関係者、あとは一般の人といい、住谷住職は「日本における本格的な出版事業の始まりを見たいと思って、宝蔵院の版木を見にいらっしゃるようです」と話す fff:

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