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    ID:
    49337
    年:
    2011
    月日:
    0104
    見出し:
    北山丸太 職人の心意気
    新聞名:
    読売新聞
    元UR(アドレス):
    http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kyoto/news/20110102-OYT8T00513.htm
    写真:
    【写真】
    記事
     「清滝川の岸に、急な山が迫ってくる。
    やがて美しい杉林がながめられる。
    じつに真直ぐにそろって立った杉で……」  深遠な美に、よほど心打たれたのだろう。
    半世紀前、文豪・川端康成は、小説「古都」に京都市北山地区の情景を繰り返し描き、そこにヒロインを生きさせた。  いまも同じ景観の杉林で、尾島俊明さん(63)は木と縄で組んだ梯子(はしご)の上に立ち、左足で幹を挟みながら枝を打っていた。  「昔は『けがと弁当は自分持ち』言うたもんや」。
    あっけらかんと笑うが、梯子の真下に谷が見えることもある。
    事故で亡くなった仲間も少なくない。
    危険と背中合わせで精魂込めて作られた北山杉の丸太は、その地肌に気品ある艶をまとい、数寄屋建築や茶室の高級材として慈しまれてきた。  尾島さんは17歳で林業を継ぎ、伝統的な「本仕込み」を続けてきた。
    夏場、「親」となる1本の立木に、伐採した木を周囲から倒し寄せて円すい形に組み上げ、皮をむいて天日乾燥させる技法だ  「危ない作業で手間もかかるが、本仕込みをした丸太は割れにくく、最高の光沢が出る。
    ただ、値打ちのわかる人が減ってしまい、市況がウンと言わんのです」  以前はひと夏に1500本を手掛けたが、昨夏は70本。
    北山丸太全体でも、2008年の生産本数は20年前の6分の1になった。
    家庭に床柱をしつらえることが減ったうえ、単価も急落している。  本仕込みの伝承者が尾島さんら4人の「尾島組」だけになって約30年が過ぎた。
    林業の後継者難はいよいよ深刻さを増している。  それでも、志(こころざし)は衰えない  「北山丸太ほど、古くなればなるほど味わいやぬくもりの出る木はない。
    木々が育つ山々は、景観にしても水の保全にしても次世代の財産になる。
    わし1人でも守っていくつもりです」  北山から北西に70キロ離れた福知山市夜久野町。
    岡本嘉明さん(65)は「あと10年が勝負。
    後継者を育てんと死ぬに死ねん」と言う。  多い雨、大きな昼夜の寒暖差という厳しい気候が、古くから国内最高級の「丹波漆」を育んだ。
    だが戦後、安い輸入品に席巻され、消滅の危機に直面している。  養鶏を本業とする岡本さんが漆と出会ったのは25年前。
    ほとんど有名無実になっていた漆の生産組合に「付き合い程度」で加わったのだが、ほかの漆にはない、独特の透明感に魅せられていった。  この8年、わずか4~5人の組合仲間を中心に、漆の木を400本以上植えた。
    幹に溝を刻んで樹液を採る作業は成木しかできず、夏の3か月間に限られる。
    昨年、採取できたのは1リットルだけだった。  「でも、いまやらなければ文化も技術も途絶えてしまう。
    いい漆を作れば、輪は広がっていく」と岡本さん。
    赤字は覚悟の上だ  その熱意が伝わったのだろう。
    若手漆芸(しつげい)家たちが、漆植えを手伝うようになった。  左京区の岡田嘉夫さん(33)は今春、「京都漆器青年会」の作品展に、漆芸家仲間らと丹波漆を使ったペンケースなどを出品する。  入手困難な丹波漆は、使ったことがない。
    でも、「いい漆は、きりっとした色気を出せる」ことを知っている。
    今月末からの仕上げ作業で、京都伝統の漆芸技術と、京都産の最高素材が、自分の手で出会う。
    いまから待ち遠しい  森が伝統の技術を支え、技がまた森を育てる。
    その循環を断ち切ってなるものか。
    「Made in KYOTO」が、人々の営みを見つめている fff:

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