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- ID:
- 47707
- 年:
- 2010
- 月日:
- 0914
- 見出し:
- 朽木盆一目で見分け
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20100913-OYT8T00955.htm
- 写真:
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- 記事
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かつて高島市朽木地区で盛んに生産され、江戸時代には全国的に知られた「朽木盆」と、ほかの産地の盆とを見分ける方法を、元市教委朽木村史編さん室長の石田敏さん(64)(高島市朽木市場)が考案した。
盆を傷つけずに形状から識別する方法で、今後の朽木盆研究に弾みがつきそうだ。
(小宮宏
祐)
朽木盆は、安土桃山時代に生産が始まったとされる。
朽木地区の豊富な木材を原料に、かつては盛んに生産された。
江戸時代には、松尾芭蕉が1675年(延宝3年)に「盃の下ゆく菊や朽木盆」と詠み、井原西鶴は「椀久一世の物語」(1685年刊行)で「朽木盆に盃を置き…」と記した。
茶人として知られる松江藩7代藩主、松平治郷(不昧公)が1枚1650両という大金で購入した、との記録も残る。
領主朽木氏が、参勤交代で江戸に出府するたびに大量の朽木盆を持参し、将軍や幕府の役人、各大名家へ贈り物として用いたことなどから、全国ブランドとして通用するようになったと考えられる。
しかし、1904年頃には木地生産が途絶え、55年に漆を塗る最後の塗師が亡くなると、その歴史に幕を下ろした。
石田さんは、骨董(こっとう)店などで福島県の伝統漆器「会津盆」や岩手県産の「浄法寺盆」が朽木盆として売られていることがあるのを知り、約5年前から朽木盆について調査を始めた。
漆製品の中でも、盆など雑器類の研究者はほとんどいない。
漆の一部をはがし、産地や時代を測定する方法もあるが、貴重な盆を傷つけてしまうことや費用がかさむことから、外見で判断できる方法を検討した。
朽木盆は円盆で、黒漆地に朱漆で16弁の菊紋や草花を描いたものが代表的。
石田さんは「16弁の菊紋が描かれていれば、朽木盆に間違いない」とし、「朽木盆のみに皇室に関連する16弁の菊紋が使用されており、特別な許可を得ていたのではないか」とみる。
菊紋以外の盆については、形状での識別法を模索。
石田さんが所有する盆や京都精華大が所蔵する盆など約140点の断面図を作製するなどして分析した。
その結果、朽木盆には底が碁石を入れる容器「碁笥(ごけ)」の底のようになっている「碁笥底」、底が平ではない「土器底」があるが、「土器底」なら
朽木盆という。
また、「碁笥底」の場合、つばの傾斜(つば勾配)と、「碁笥底」の直径と盆の直径の割合(刳(くり)率)を他の盆と比較したところ、朽木盆は、つば勾配が54%~73%、刳率が53%~75%の範囲内であることが判明した
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