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- ID:
- 46592
- 年:
- 2010
- 月日:
- 0627
- 見出し:
- 「五重塔」譲ります 大工の技術光る一品
- 新聞名:
- 埼玉新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.saitama-np.co.jp/news06/28/06.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
春日部市南4丁目の元大工の棟梁、加藤辰夫さん(78)は20年ほど前からミニチュアの五重塔など宮大工の技術を生かした作品を作り、自宅に飾っている。
人の体ほど大きく、手を抜かない立派な作りが自慢だ。
この作品を「誰かに譲りたい」と引き取り手を探している。
戦中戦後の波乱の人生を生きたが、
今は病床に。
亡き妻をしのびながらリハビリに励み、再起を目指している。
■長屋暮らし
作品は「一つ仕上げるのに4カ月。
木の切れ端を引き割りして部品を作り、小刀で彫刻もした。
丁寧に作った」と話す
東京・神田司町の生まれ。
きょうだいは6人。
父は腕の良い大工だった。
「東京の下町はみんな子だくさん。
貧乏長屋の暮らしはにぎやかで楽しかった」。
父はのんべえ。
辰夫さんら子どもらが酒屋に量り売りの焼酎を買いに行く。
子どもが行くと、抽選券をくれた。
それで四斗樽を当てたことがある。
「親父に知れたら大変だ。
朝から飲んで仕事に行かない。
みんなで相談して引き取ってもらった。
数万円の金になってお袋は喜んだ。
でも親父はちゃぶ台をひっくり返して大変だった」
■東京大空襲
14歳の時、東京大空襲を体験、火の海を生き延びた。
その後、父と姉が東京に残り、小学生の妹は本庄市へ、ほかの子と母は群馬県伊勢崎市の母の実家へ疎開。
「遠い親戚ばかりで、生活は苦しかった。
お袋の着物は全部食べ物になった」
波乱の人生だったが、戦後しばらくしてから30年間、越谷市で暮らした。
一緒に暮らした父は85年に78歳で、お袋も92年に81歳で他界した。
■脳梗塞
3年前に妻千代子さんが71歳で他界。
これを機に越谷市赤山町の家をたたみ、春日部に。
千代子さんは東京・新宿百人町の大工の娘。
63年に結婚したが「人の面倒見が良い女房で、みんなが惜しんでくれた」という。
今年3月2日に脳梗塞(こうそく)で倒れ、市内の病院に。
左手足がしびれるが、再起を目指してリハビリに一生懸命だ。
「今が大事なんです。
リハビリをちゃんとやらないと動けなくなる」。
気がかりなのは自宅に残した五重塔などの作品。
「ほしい人があればあげたい」と言う。
問い合わせは大和商事の荒槙さん(℡048・755・0280)
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