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ID:
46462
年:
2010
月日:
0618
見出し:
東大、木のミクロ構造を制御するメカニズムを解明
新聞名:
日本経済新聞
元UR(アドレス):
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=254280&lindID=4
写真:
-
記事
木のミクロ構造を制御するメカニズム解明 発表者 福田 裕穂(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 教授) 小田 祥久(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 特任研究員) 発表概要 東京大学大学院理学系研究科の福田裕穂教授のグループは、木のミクロ構造が作り出されるメカニズムを世界で始めて解明しました。
この解明により、木材の改良や新たな木質素材の生産などへの道が拓かれました。 発表内容 (A)癌細胞のように増殖を続けるシロイヌナズナの培養細胞(左)が特殊な転写因子の働きによって木質細胞に分化する(右) (B)木質細胞では、微小管がレールとなり複雑な構造の細胞壁が作られる。
MIDD1が局所的に微小管を破壊することによって複雑な細胞壁パターンが生まれる。 木材は陸上バイオマスの大きな部分を占め、石油や石炭などの化石資源に代わるエネルギーまた素材用のバイオマス資源として、人類に欠かせないものです。
この木材は柔軟で丈夫な素材であり、木質細胞が作り出す細胞壁が何層にも積み重なって作られています。
木質細胞の細胞壁には無数の微 小な孔が空いており、このような細胞壁の複雑な構造が、木材に柔軟で丈夫な性質をもたらしています。
しかしながら、このような細胞壁の構造がどのようにして作られているのか、これまで明らかにされていませんでした。
今回、東京大学大学院理学系研究科の福田裕穂教授・小田祥久特任研究員らのグル ープは、このような木のミクロ構造が作り出されるメカニズムを世界で始めて解明しました。 同グループは癌細胞のように限りなく増殖するシロイヌナズナ(注1)の培養細胞に、木質細胞の分化を制御する特殊な転写因子(注2)を導入し、その発現レベルを巧妙に操作することによって、木質細胞をいつでも好きなときに、また好きなだけ作り出すことに成功しました(図1A)。
この技術では、入れる遺 伝子を変えることにより違った細胞壁パターンの木質細胞を作ることができます この木質細胞の生産技術を利用して、木質細胞で働く遺伝子群の働きをマイクロアレイ法(注3)によって網羅的に調査しました。
その結果、木質細胞の細胞壁パターンを作り出す上で必須となる遺伝子を発見し、MIDD1(注4)と名付けました。
MIDD1タンパク質は、局所的に細胞壁の合成を抑制する因 子であることが分かりました。
その結果として、このタンパク質の分布の違いが、細胞壁のパターンを変えることになります(図1B)。
高感度の蛍光顕微鏡下で連続観察をすることにより、MIDD1タンパク質は特定の細胞膜領域と結合しながら、一方で、細胞壁合成のレールとなる微小管(注5)に結合し、その 近傍の微小管だけを破壊することが分かりました(図1B)。
そのため、局所的に細胞壁の合成が抑制され、細胞壁に無数の微小な孔が作られることが明らかとなりました。
微小管が細胞壁の構造を制御していることは、古くから知られていましたが、局所的に微小管を破壊することによって細胞壁の構造を制御 するというメカニズムは今回初めて明らかになったものです。
これにより、細胞壁のパターンを人為的に制御するための新しい道具を手に入れたと言うことができます。
本研究の成果は、革新的な木質細胞の生産技術と共に、今後の植物科学の発展に大きな影響を与えると期待されます。
また、このメカニズム を応用し、MIDD1の働きを人為的に操作することで、木材のミクロ構造を変化させ、新たな木質素材を開発する道が拓けます。
この成果は、米科学雑誌、Current Biology誌に掲載される予定です 本研究は、文部科学省「科学研究費補助金19060009」「日本学術振興会基盤研究A 20247003」「日本学術振興会特別研究員奨励費02718」などの支援を受けて行われました。 発表雑誌 Cell Press カレントバイオロジー(Current Biology)オンライン版(米国東部時間6月17日(木)午後12時(正午))に掲載予定 用語解説 注1 シロイヌナズナ 双子葉植物のモデル植物。
高等植物の中で最初に全ゲノムが解読され、世界中の植物科学研究に利用されている。 注2 転写因子 DNAに結合し、遺伝子の発現を制御するタンパク質の総称 注3 マイクロアレイ法 2万個以上もの遺伝子について、それらが働いているかどうかを一度に解析する技術 注4 MIDD1 Microtubule depletion domainの略。
この研究の初期において、MIDD1が微小管(microtubule)の消失した領域(depletion domain)に蓄積していたことからこのように名付けられた。 注5 微小管 チューブリンと呼ばれるタンパク質が重合することによってつくられる直径24nmの繊維状の構造。
植物細胞では細胞膜直下に多数の微小管が発達している。
細胞壁の主成分であるセルロース微繊維はこれらの微小管に沿って合成されてゆく fff:
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