ID : 1903
公開日 : 2006年 10月23日
タイトル
床と壁にはお金をかけよう
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/housing/diary/TKY200610230136.html
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元urltop:
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写真:
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家を建てるとき、絶対に譲れないもの、ここだけはお金をかけたい場所というのがある。たとえば風呂、キッチン、床暖房、間取りなどなど。
ガラス瓶の底でたたいて独特の艶(つや)と味わいを出した床
バリの古材で作ったテーブル。唯一無二の存在感がある
私が自分の経験とインテリアの取材を通してたどりついたのは、床と壁にお金をかけるのが一番まちがいない、という結論だ。
理由は簡単で、目に触れる面積がもっとも広いからだ。
ここに手を抜くと、どんなに豪華な家具や設備やすばらしい間取りだとしても、どこか“しまらない”気がする。逆に、細部がたいしたことはなくても、無垢(むく)の床&漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)など素材や仕
上げにこだわった壁だと、「あ、いい家だな。気持ちよさそうだな」という印象になる。
こういう結論にたどり着くのまで、けっこう時間がかかった。きっかけになったのは、ミニ戸建てといわれる狭小地にディベロッパーが三棟ほどまとめて建てた家だ。そこそこ外観もオシャレで、どこもかしこもきれい。一
坪風呂や食器洗い機など、設備や間取りも申し分ないのだが、見るたびになにかぴんとこない。新しいからかと思っていたが、同じ狭小住宅で、建築家の建てた家を見てはっとした。壁と床だ。
クロスの壁と、左官がていねいに塗った漆喰の壁では、手触り、質感、あたたかみ、存在感がまったく違う。人の手で塗ったものは、完璧(かんぺき)ではないからこそ味わいがある。印刷関係者から聞いた話だが、人の
感性というのは、規則正しく並んでいるドットより、不規則な並びのほうに本能的に目がいくのだという。ゆらぎや乱れのなかにあそびを見いだし、その関係性を追おうとする習性があるというのだ。
不規則なコテの跡は、あじわいとなり、だからこそ何年たっても飽きない魅力があるのだろう。
合板や集成材でなく、無垢の床には不規則な節目があり、時間の経過とともに変色や傷が増える。繰り返しになるが、それこそが味わいなのだ。
先日も、知人の家を訪ねる機会があり、そういうことを再確認した。
バリの家具や雑貨を扱う彼の家の床は、無垢の板である。それだけではつまらないので、入居前に、自分でジュースのガラス瓶の底で床をたたいたりこすったりして、つやと模様をつけたそう。
頑強でモダンなRC造りのその家は、手間ひまかけた床と、バリから取り寄せた古材の扉がアクセントになっていて、新しいのに居心地の良いなごむ空間になっていた。
無垢といっても高い材ではないと言っていた。お金をかけるというより、壁と床には“手間ひまかけよう”というのが正しいかも知れない。
我が家も、設計時はもっとほかのことに目がいっていて、床は予算の関係で良い材にできなかった。入居後は始終目がいくところなので、なにかにつけてはそれを後悔している。
替えようと思ってそう簡単に替えられる場所ではないので、これから家を建てる人は熟考を。家具をはじめ、あとからどうとでもなるものはいくらでもあるのだから。
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