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人工林の間伐は生物多様性を短期的に高める
●ポイント
・人工林の間伐が、下層植物の種構成を変え、昆虫の種数と個体数を増加させて森林の生物多様性を短期的に高めることを明らかにした
●概要
森林総合研究所は、スギ人工林において、間伐の有無が下層に生える植物や昆虫の構成、種類、数などに及ぼす影響を比較し、間伐には植物の種構成を変化させ、昆虫の種数や個体数を短期的に増加させる効果が
あることを明らかにしました。
人工林の間伐は生物多様性の保全や回復に役立つのではないかと注目されています。森林総合研究所では、スギ人工林における下層植物や様々な昆虫について、間伐しなかった林と間伐した林(間伐1年後と3年後
)で生物の種類や数の変化を比較しました。その結果、植物では間伐によって種の構成が変わりましたが、種の数や被度(地表面を被覆している面積)には違いがありませんでした。昆虫では、間伐1年後は間伐した林に
おいてすべての昆虫グループで種数・個体数ともに多くなりましたが、3年後にはグループによるばらつきはあったもの、間伐しなかった林と差がなくなる傾向にありました。
これらの結果から地域内における計画的な間伐は、生物多様性保全にも貢献することが示されました。
予算:森林総合研究所交付金プロジェクト「要間伐林分の効率的施業法の開発(H17~19)」、
地球環境研究総合推進費「里山イニシアティブに資する森林生態系サービス(H20~22)」
●研究の社会的背景
2010年10月に名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されるなど、生物多様性の保全と持続可能な利用の推進が世界的な関心を集めています。国際的には、森林消失による生物多様性の減
少が報告されています。一方、我が国は国土の約67%を森林が占める森林国ですが、うち41%が人工林であり、その面積の大きさからも生物多様性の保全と調和した、持続可能な人工林の管理手法の開発が求められ
ています。このため、人工林を適切に管理する上で不可欠な施業である間伐について、木材供給への寄与や地球温暖化の緩和のみならず、生物多様性の保全への貢献についても適正に評価を行った上で、積極的に推
進していくことが求められています。
●研究の内容・意義
間伐が生物多様性に及ぼす影響を調べるため、下層植物と昆虫(ハナバチ、チョウ、ハナアブ、カミキリムシ)の種構成と種数・個体数を、約25年生の間伐したスギ人工林と間伐しなかったスギ人工林とで、間伐1年後
と3年後に比較しました。その結果、植物では1年後、3年後ともに種構成が変わりましたが、種数や被度には大きな違いがありませんでした。昆虫では1年後は、全てのグループで、間伐した林で種数が多く、また総個体
数も多くなりました。ところが3年後にはハナバチを除くグループで種数には大きな違いがなくなり、カミキリムシでは総個体数にも大きな違いはなくなりました。これらの結果から間伐は植物の種構成に変化を与えること、
一部の昆虫の種数や個体数を短期間に増加させる効果があることが示されました。一方で、間伐による生物多様性への影響の度合いや持続期間は、対象とする生物によって異なっていることが明らかになりました。
今回の研究は、人工林が生物多様性の質を高める手段として、地域内で計画的に間伐することの有効性を具体的に明示しました。これら成果は生物多様性の保全と調和した持続可能な森林管理に役立てることができ
ます。
●本成果の発表論文
タイトル
:Responses of community structure,diversity,and abundance of understory plants and insect assemblages to thinning in plantations(人工林の間伐による林床植生と昆虫の群集構
造、多様性、個体数の反応)
掲載誌:Forest Ecology and Management(森林生態学と管理、オランダ)
巻号(年):259巻3号(2010年)
著者:滝久智、井上大成(多摩森林科学園)、田中浩(九州支所)、槇原寛、末吉昌宏(九州支所)、磯野昌弘(東北支所)、岡部貴美子
※以下の資料は、添付の関連資料「図1・2」を参照
・図1 間伐されなかった約25年生のスギ人工林と間伐された約25年生のスギ人工林(間伐率:材積率で約30%、本数率で約50%)
・図2 間伐1年後と3年後に採集された昆虫(ハナバチ・チョウ・ハナアブ・カミキリムシ)の種数と個体数
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