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ID : 13391
公開日 : 2009年 9月28日
タイトル
森と水の循環 生態系の危機、気候と直結
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/eco/forum2009/news/j/TKY200909280092.html
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元urltop:
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写真:
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水環境の悪化から生態系の危機へと話題を広げつつ、その対策について議論した。来年10月、名古屋市で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を意識した展開になった。
 嘉田由紀子・滋賀県知事は「2030年の温室効果ガス排出量を90年比で50%削減する」という県独自の目標紹介から切り出した。「琵琶湖は冬に表層の水が冷やされ、重くなって湖底に沈み、酸素を供給する天然の仕 組みがあった。だが、暖冬でこの『琵琶湖の深呼吸』が妨げられ、湖底の生物が大量死している」と述べ、地球温暖化は「小さな窓・琵琶湖からみることができ、行動が求められている」と強調した。
 80年代の準備段階から生物多様性条約にかかわっている国際自然保護連合主席研究員のジェフリー・マクニーリー氏は「5千種以上ある両生類の31%が絶滅の危機だ。アマゾン川流域でさえ渇水に陥る異常気象が 背景にある。チベット高原の氷河が過去40年間に7%減少し、アジアの水供給を脅かしている」と生物多様性と水の危機、気候変動の関係に言及。多様性を守るための行動は、気候変動の対策に直結することを強調し た。
 参加36社による「企業と生物多様性イニシアティブ」で事務局長を務める足立直樹氏は「企業は水、空気といった生物多様性の恵みに依存しながら、一方で影響を与える存在だ」と指摘した。海外ではダム湖への土砂 流入を防止するために発電所が上流に木を植え、ミネラルウオーターの会社が汚染源になりかねない畜産農家に金を払って水源保全に努めている例を紹介。「企業の生物多様性保全の活動は、本業を守るために必要 なことだ」と強調した。
 質疑応答では、80年代、生物多様性という広い概念が生まれた背景について、マクニーリー氏が「絶滅危惧(きぐ)種などの保護だけでは『守りたいものを守れない』と科学者が考え、包括的な絵を描くことになった」と 解説した。
 嘉田氏は「日本ほど、伝統的な知識の中で生き物を観察し、食や遊び、文学などに採り入れた文化はない」とし、源氏物語に登場する植物が127種類にも及ぶ例などを挙げて「生き物の多様性を文化の中に生かしてき たが(現在は)気づかずに壊していることが気になる」と懸念した。
 足立氏は、日本企業で盛んな植林活動について「単に木を植えているだけだと『見せかけの取り組み』になってしまう。本業がどう生物多様性、環境に影響しているか把握し活動することが大切だ」と指摘。マクニーリ ー氏は、生物多様性条約を批准していない米国について「オバマ政権は条約を支持しているが上院を通過させるのは難しい。COP10までの批准は無理だろう」と見通しを述べた。
 COP10に向け、嘉田氏は「多様性と温暖化、水質汚染などバラバラに語られてきたが根っこは共通。わかりやすく伝えて関心を持たれるようにしたい」と語った。足立氏は「気候変動対策では、産業の大転換が必要に なる。カギになるのは生物多様性で、持続できない石油ベースの資源から持続可能な生物資源ベースの産業に変わる変革の時期が来たのでないか。日本の企業が青写真を示すことを期待している」と話した。(高山裕 喜)  ○特別講演(要旨) 森林活用へ林業再生を 近藤晋一郎・王子製紙代表取締役副社長  世界の紙需要は、試算では17年に1.3倍(07年比)となり、1億2500万トン増える。日米欧は横ばいだが、中国やアジアが大きく伸び、多くの木材原料が必要になる。
 環境に配慮して紙の原料を確保するのは、製紙産業の大きな課題。08年末時点で、日本企業は50万ヘクタールを海外で植林している。需要増に応えるため、着実に増えている。当社は「森のリサイクル」という考え 方で環境や社会に配慮した原料の調達に努めている。
 日本の人工林は1千万ヘクタールを超えている。戦後植林した森林が大半を占める。この豊かな資源を持続可能な方法で有効利用し、産業につなげて森林の機能を高めることが重要だ。伐採や植林のルール作り、森 林管理の専門家育成などに取り組み、林業を再生させねばならない。
 ◇自然保護と企業活動、両立の時代  生態系の異常の原因を探れば、気候変動の影響を考えざるを得なくなる。身近な森と水の循環から生態系の危機を考えるはずの分科会は、温暖化対策の緊急性を再確認する議論になった。
 生物多様性の研究者であるマクニーリー氏は、生物多様性、水、気候変動という三つの危機を分けず、相互の関連性の理解を広げることが急務だとした。CO2排出量の議論に終始しがちな地球環境問題のとらえ方に 苦言を呈したものだろう。
 その一方で、生物多様性の危機は文化的な側面からもとらえることができる、という嘉田知事の指摘は、新鮮だった。自然の危機は源氏物語以来の日本人の自然をめでる感性の基礎が揺らぐことなのだ、という。
 我々はともすれば希少種の数や経済的損失といった数字の議論に熱中しがちだが、生態系の危機はもっと広い視野と感性で受け止めなければいけない。危機に関する議論ながら、そこに魅力も覚えた。
 3氏が産業界の取り組みを高く評価していたことも印象に残る。足立氏は大量の水を使う半導体工場が水を浄化した上で地域に戻し、地下水を涵養(かんよう)している例を紹介した。工場を地域の水循環に組み込むも のだ。
 本業の中で取り組んでいるかどうかが、単なる企業PRと区別するコツだという。かつてのように自然保護と企業活動を対立的にとらえる時代ではないのだろう。来年10月、名古屋市で開かれるCOP10に向け、議論 の土台は着実に広がっている。
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