ID : 1454
公開日 : 2006年 8月 6日
タイトル
緋牛内の大カシワ
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://hokkaido.yomiuri.co.jp/tanken/tanken_t020323.htm
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元urltop:
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写真:
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雑木林と一面の雪に覆われた畑地が広がる網走支庁端野町緋牛内(ひうしない)地区。昭和30年代に25戸を数えた集落は今、わずか4戸が残るだけだ。樹齢350年を超える「緋牛内の大カシワ」は、そうした
集落に残る早坂佳一さん(66)、英子さん(65)夫妻が暮らす庭先に、風雪に耐えてじっと立つ。
再び樹勢を取り戻した緋牛内の大カシワ
樹高17メートル、幹周は5メートル。高さはそれほどではないが、1988年度、環境庁から、幹が分かれていない単木のカシワの幹周としては日本一とのお墨付きをもらった。
この地域は1897年、屯田兵によって開拓が始まった。漁網の防腐剤などに必要なタンニンが樹皮から採れるため、大正時代の初めから皮はぎの採取が進み、木材は鉄道の枕木や木炭に使われたため、良質の大木は
たちまち姿を消した。しかし、大カシワだけは開拓時代から「山の神」としてまつられ、伐採を免れた。
しかし、すべての葉を落とし、枝ぶりをあらわにした神木は、思いのほかみすぼらしく痛々しい。大枝は支柱に支えられ、幹にはウレタンが埋められている。
「3年をかけて、外科治療した跡なんです」と話すのは、北見在住の樹木医、鈴木順策さん(66)だ。これまで道内各地の指定文化財や保存木など計110本に治療を施してきたベテランの鈴木さんも、治療を始めた19
97年当時は駆け出し。「日本一のカシワの巨樹、ご神木という重圧感に、押しつぶされそうになった」と振り返る。自分に治療ができるのだろうか――。高まる不安の中で、鈴木さんはお神酒と清めの塩を持って何度も足
を運び、深く刻まれたしわのような樹皮にじっと手を当てて仰ぎ見た。巨樹との対話。鈴木さんは、人をはるかに超越した、不思議なエネルギーを感じ取ったという。「どうぞ私にお手伝いさせてください」。意を決した瞬間
、この言葉が口をついて出た。
治療はまず、地上12メートルの高さにあった巨大なこぶを切除し、根元から4メートル近く空洞になっていた幹の内部を削り、防腐処理した丸太を充てんする大掛かりなものだった。「“樹格”が違うんです。このカシワと
出合ったおかげで、今の私がある」と、鈴木さんは治療に携わった喜びを語る。
再び樹勢を取り戻した大カシワが、青々と茂る季節も間もなくだ。伸びた枝からは、まるで神様からの贈り物のように小枝が落ちてくるという。早坂さんの家では、この枝を捨てず、塩で清めてストーブにくべている。
深い雪に埋もれた根元には、コップ酒が1つ供えられていた。開拓のくわが入れられてから110年。住む人の姿は代わっても、大カシワは今も人々の心の中に息づいている。
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