ID : 1386
公開日 : 2006年 7月25日
タイトル
日本の天然林は絶滅の危機
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.janjan.jp/living/0607/0607268543/1.php
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元urltop:
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写真:
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「日本の天然林、国有林はこのままでは絶滅の危機に直面する・・・」と警告するのは、京都大学名誉教授で、世界的な植物学者の河野昭一氏です。河野氏は国際自然保護連合・生態系管理委員会東アジア地区副
委員長も務めています。
7月22日、札幌市で「大規模林道問題北海道ネットワーク」が主催した、河野昭一氏の「日本の天然林をなぜ守らなければならないか」と題する講演会が開かれました。河野氏は自らの長年の研究をもとに、日本の天然
林の価値を評価し、伐採で危機的状況にある日本の天然林の現状について熱心に語りました。
熱帯林などでの凄まじい森林破壊は、しばしばマスコミによって報道されますが,日本の天然林の伐採の現状については、ほとんど報道されません。河野氏の講演会の内容を紹介し、日本の天然林が置かれている危
機的状況を報告します。
日本の森林のルーツ
日本の森林には、氷河期の前の第三紀に起源を持つ固有の植物が豊富に生育しています。日本と北米大陸東部には近縁種が多く分布していますが、これは第三紀に広く分布していた植物が氷河期に分断されたものと
考えられています。
氷河期の北米大陸では、大陸氷河が発達したために、第三紀に広く分布していた植物は氷河がなかった東部に追いやられました。一方、氷河の影響が少なかった日本列島では、第三紀起源の多数の植物が生き延びる
ことができました。
ブナの仲間は北米では氷河に覆われなかった東部の一角に取り残され、日本では主に本州の海岸沿いに南下したと考えられています。しかし、北海道の渡島(おしま)半島や奥尻島のブナは、氷河期も細々と生き続けて
いた可能性が高いと考えられます。
遺伝的多様性の重要性
ブナの個体ごとに葉を採取し、すりつぶして遺伝子を調べることで個体の遺伝子型が分かります。このような遺伝子型の研究から、親木の周辺に子どものブナが集中していること、ブナ林は様々な遺伝子型の個体によ
って構成されていることが分かってきました。
ブナの集団が大きいと遺伝子型も多様であるのに対し、小さな集団になってしまうと親木の個体数が減ってくるために、遺伝子型の多様性が失われてしまいます。このような集団では絶滅する確率が高くなります。
開発や伐採などにより、森林が小さく分断され孤立していくと、多様な遺伝子をもった元の集団に戻ることはできなくなり、絶滅への道をたどることになります。
森林を分断し、多様性を奪う伐採
現在、日本の国有林で行われている伐採は、多様な遺伝子型を持つ親木を伐り、重機で表土を剥ぎ取ってしまうため、土壌中の植物の種子集団や土壌動物に壊滅的な影響を与えています。
このような森林には、絶滅を危惧される様々な動植物が生息しているにも関わらず、希少動植物の調査すら行われていません。しかも近年は、かつては伐らないで残していた尾根筋の天然林にまで手を着け始めました
。場所によっては皆伐に近い伐採も行われています。
林野庁は、2005年4月に公益的機能を重視する公益林を46パーセントから91パーセントへと引き上げ、木材生産林は54パーセントから9パーセントへ削減すると方向転換をしました。ところが、その後も国民の共有
財産である天然林や保安林を次々と伐採しているのが実態です。その上、違法伐採まで行われています。
危機的現状と今後の課題
国有林の伐採量の年次変化を見ると、伐採量は減少していますが、これは伐る木がなくなっているからです。このまま伐りつづけたら、近い将来、固有の植物を含む日本列島の森林は、壊滅状態になるでしょう。
また、全国で建設が進められている大規模林道も、森林を破壊するだけで役に立つ道路ではありません。今すぐにこのような乱伐を止めさせなければ、取り返しのつかないことになります。
私たちの生活に木材生産は不可欠です。天然林を守り、また、必要な木材を確保するためにも、林野庁は人工林の持続的な施業に力を入れ、自給できる木材生産を確立する必要があります。
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