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ID : 12056
公開日 : 2009年 6月12日
タイトル
林業 前向きに未来見据え
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新聞名
徳島新聞
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元URL.
http://www.topics.or.jp/special/124435638421/2009/06/2009_124468854038.html
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元urltop:
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写真:
 
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 昭和20~40年代、戦後の復興経済の波に乗って木材需要が急伸、価格も跳ね上がった。面積の9割以上を森林が占める那賀郡も活況を呈した。
 「あのころは大阪とかから木を買い付けに、ようけ業者が来たわ。業者は旅館に泊まり込んで、何日か山持ちとどんちゃん騒ぎするんよな。3、4日したら、リュックからポンと出てくるんじゃ。何がって札束じゃ。小1千万 はあったのぉ」  当時を知る人の話に耳を傾けると“バブル”な話が次々と出てくる。木を少し切るだけで1年間暮らせ、子どもの進学資金にもなった。切れば切るほど、もうかった。森は宝の山だった。が、今はもう昔話になった。
 木頭森林組合などによると、木材価格は1980年ごろが最も高く、杉の中目材が1立方メートル当たり5万円前後だった。しかし、その後は下落が続き、とりわけ景気が一気に冷え込んだ昨年秋以降は急落、今年4月には 8千円台にまで落ちた。
 一般的に木材の伐採、運搬、売却にかかる経費は1万1千-1万2千円とされる。切っても損をする。行政からの補助金がないと、成り立たない産業になってしまった。
 「前向きに考えれば、きっと何とかなる」。那賀町臼ケ谷(旧上那賀町)の林業、橋本光治さん(63)は、未来を決して悲観していない。
 作業道の幅約2メートル、車の幅も約2メートル。橋本さんは、2トントラックで急坂を駆け上がる。サイドミラーは折り畳んでいる。木に当たらないようにするためで、「大丈夫。私も死にたくないから」。笑いながら、慎重 かつ大胆に森の中を突き進む。
 作業道は、26年前から自ら切り開いてきた。100ヘクタールの所有林に張り巡らせた道の総延長は約30キロに及ぶ。「林業で一番ネックなのが人件費。少ない人数でするには、作業道と機械化しかないと考えた」と話 す。
 「こんな狭い道、どないもならんわ」。周囲から物笑いの種にされた。しかし、信念は曲げなかった。「2メートルから2メートル30センチ。この幅なら山も木も傷めない」と、道幅は最小限にした。作業道が延びた今、木を 倒せば、どれかの道にかかる。あとはトラックに積んで、山を下りるだけ。家族2、3人で十分になった。
 7年前、橋本家に長男忠久さん(35)が帰ってきた。光治さんは「『林業はおもっしょい、おもっしょい』って、小さいときから、だましてきてたら、その通りに戻ってきた。言葉の力って、すごい」と笑い飛ばす。トラックの運 転はまだ光治さんの専売特許。「まだまだ奥が深いです」。忠久さんの表情も緩む。
 那賀町は、豊富な森林資源をエネルギーに活用する「バイオマスタウン構想」を進めている。本年度は、木材や廃材を原料にしたバイオ液体燃料の実証プラントが町内に建設される。国内初の取り組みとあって、軌道 に乗るかどうか、関係者も不安がぬぐえないが、期待するしかない厳しい現状が林業にはある。
 構想の始動も絡み、林業に対する地域の視線は変わりつつある。
 公共事業の削減で苦しむ町内の建設業5社が、林業への参入を決めた。経営者の1人は「バイオマスがどんなもんで、成功するんやら、どうやら、ようは分からんけど、淡い期待はある」と希望を託す。
 木頭森林組合は2年半前から若者の定期採用を始めた。採用数は計11人に上る。
 榊野千秋組合長(53)は「林業に追い風は吹いている。年齢構成を考えたら、今のうちに若者を育てとかなあかん」と、採用の理由を語る。
 雇用創出の場へ、山は再生できるのか。「山は、どこにもいかんと、ここにある。私やが守っていかなあかん」という榊野組合長。山とともに生きることが地域を守る。そう確信している。
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