ID　：　9701

公開日　：　2008年 12月　4日

タイトル

木材の積み出し基地でもあった“秘境駅”指定席は即完売

新聞名

スポーツニッポン

元URL.

http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20081203025.html

元urltop:

写真:

　

　交通手段は日に数本の列車だけ。山奥などにあり、降りても無人で歩道もない。そんな“秘境駅”が静かなブームになっている。「何もないのに感動した」「あるのは静寂のみ」。全国に少なくとも２００はあると いう秘境駅をめぐるファンは多く、駅の利用客も増えている。
　「何もなくて（列車を待つのが）つらいですよ」。乗車前、車掌に念押しされ、ＪＲとの乗換駅から２時間４０分かけてたどり着いたのは大井川鉄道井川線の尾盛駅（静岡県川根本町）。「秘境駅へ行こう！」などの著書があ り、秘境駅の名付け親、広島県の会社員牛山隆信さん（４１）のお薦めの一つだ。
　降りたのは記者１人。１１月上旬の日曜日、駅は色づいた山に囲まれ、構内には鍵がかかった小屋２軒とタヌキの焼き物が２体あるだけ。葉の落ちる音が聞こえるほど静かだ。
　置いてあったノートには「世の中から隔離された世界」「駅が貸し切り」と、１年で約１１０件の書き込みがあった。
　後続列車でやって来た茨城県の会社員直井則祥さん（３７）も「本当に何もないですね」と驚いた様子。「昨夜、インターネットで秘境駅を初めて知った。鉄道が好きで我慢できず、衝動的に来てしまった」と話す。
　大井川鉄道によると、尾盛駅の設置は１９５４年(昭２９)。当時、近くにある井川ダムが建設中で、駅周辺の作業員宿舎に約２００人が住んでいた。
　林業も盛んで、尾盛駅は木材の積み出し基地でもあった。７０年を最後に搬出記録はないが木材業者との鉄道輸送契約は残ったまま。保線基地としての役割もあり、駅の廃止の予定はない。
　駅の乗降客数は９８年度に８６人だったのが２００７年度は２５３人と約３倍に。０８年は４―９月だけで２３８人と急増している。大井川鉄道は「まさに秘境駅効果。異空間を楽しんで」とＰＲする。
　ＪＲ東日本もブームに注目。国鉄時代の車両を使い、岩手県の山田線、岩泉線で０５―０７年に臨時列車「秘境駅号」（２両編成）を年２―４回運行した。
　秘境駅として名高い押角駅（同県宮古市）などが途中にあり、指定席は予約開始後すぐに完売した。ネットを通じて知り合ったファンが秘境駅に集まって語り合う会もあちこちで開かれているという。
　牛山さんは「秘境駅は大自然の真っただ中にあり、心が解放される。手軽に冒険心を満足させることができるのも魅力」と話していた。

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