ID : 8321
公開日 : 2008年 7月18日
タイトル
一生続く木工の魅力追求
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/domestic/inaka/20080718tb01.htm?from=yoltop
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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木工おもちゃや弁当箱を手作りしていた中島保さんは、勤務先で木工細工に興味を持った従業員仲間と友人になる。その人は東京都の山あいの村檜原村から通っていた。それが縁で訪ねた村は緑の山々と清
流が印象的だった。学生時代から大好きだった上高地の風景に似ている場所もあった。
しかも、檜原村は、自宅のある府中からわずかな時間で行くことができる。“休日村民”を決意して家を借り、その半年後には助成金制度を利用したカナディアンシダーロッジと木工所を建てた。
早期退職を見据え、木工を学ぶ
立ち寄るお客様には製品の説明をする 村内に活動拠点ができた保さんは、徐々に村民たちとのかかわりが深くなっていった。
「ソフトボールに参加したことが転機になりました。審判をしたり、選手として仲間に加わりました。村のみなさんもがんばってプレーしているのですが、普段からのんびりしているためか、失礼ながら俊敏性がない。私
の方が足も速いし、何でもできてしまうのです。まずは、その運動能力に感心されました。そして、私が高校時代にサッカー部だったのを知ると、今度は少年サッカーの指導を任されました」
平日は勤務先でお客からのクレームの処理や品質管理を担当する。そして、休日になれば府中の自宅から車で50分の檜原村に来て、木工とサッカーコーチをする生活だった。
前編で紹介した地域活性化のための助成金制度に続き、会社が新たに導入した「セカンドライフ休暇制度」を利用することにしたのは56歳の時だ。これは早期退職を視野に入れた制度で、それを前提に長期休暇が取
得できる。給料の支給は6割、ボーナスは2割となるが、それでも将来を見すえれば利点が多かった。
「村での活動が楽しくなっていましたから、喜んで手を挙げました。そして、長野県上松技術専門校で木工を勉強することにしました。期間は1年間です。17歳の少年から60歳の人がいる教室で、木工や教養などを学び
ました」
専門校での勉強を終えたら退職、檜原村で木工を軸にした活動を本格的に始める。保さんの夢は広がっていた。
自分への約束を果たすために
商店が点在する、山に囲まれた檜原村 長野で勉強を始めて8か月がたった12月末、檜原村役場から電話がかかってきた。成人式でスピーチをしてほしいという内容だった。サッカーを教えていた少年たちが成人を迎
えるのだ。保さんは快く了承した。
「スピーチのテーマは『夢と青春』に決めていました。長野から檜原村に着いてみると、昭和4年に完成した郵便局の解体工事が始まっていました。『壊さないで』と叫びましたよ。私がなんとかするから待ってくれ、と。す
ると、局舎の持ち主の元特定郵便局長の大家さんが『いいですよ、あげます』って。その後のスピーチでは『年齢を重ねた私でも夢を持ち続けている、それは郵便局舎の移築の実現化だ』と話してしまったのです」
とりあえず解体を4月まで待ってもらった。3月に技術専門校を卒業、勤務先も退職して、約束どおり4月に村に戻った。しかし、潤沢な資金はないし、移築させる土地もない。
「妻もその親もスピーチを聞いていましたし、村のみんなも聞いていた。つまり、移築の実現は自分への約束だったのです。しかし、役場に相談しても誰も首を縦に振らない。期限も迫っているし、八方ふさがりの状態で
した。そんな時にスピーチを聞いていた地元の建築業者社長が、『道具はタダで貸す。従業員の手配もする。だから実行しろ』と言ったのです。木工店にするのなら観光名所の近くが最適です。それなら払沢の滝のそば
が良い。やがて、遊歩道沿いに土地を持っている人が見つかりました」
人を頼るより本人が行ったほうが良いというアドバイスを受け、所有者の高取六郎さんに連絡を取った。返事は「今日、来てくれ」だった。訪ねていくと、「昔の大事なものを壊さずに移すのは大賛成」と言ってくれた。
六郎さんの奥様は「おじいさんの土地だから……」と懸念したが、六郎さんは「かまわない」とさえぎると、続けて「傾斜地だけど建たないことはない」と言った。借地代はわずかに年額1万円。「あんたは子どもたちにサ
ッカーを教えてくれたから」が、取り持った縁だった。
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