ID : 8260
公開日 : 2008年 7月11日
タイトル
州歯科大 学生見守るヒポクラテスの木
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20080711ddlk40100398000c.html
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元urltop:
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写真:
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古代ギリシャの医聖ヒポクラテス(紀元前460~377年ごろ)が生まれたエーゲ海・コス島に現存する巨大なスズカケ(プラタナス)の木は、この木陰で医聖が弟子たちに医学を説いた「ヒポクラテスの木」とし
て伝わる。ここから30年ほど前に九州歯科大(北九州市小倉北区)へ株分けされた貴重な苗木は立派な巨木に成長した。巨木に見守られた九歯大の学生たちは卒業時、医の倫理の模範とされる「ヒポクラテスの誓い」を
宣誓し、歯科医師への第一歩を踏み出す。【松下英志】
九歯大にヒポクラテスの木がやってきたのは78年。前年に創立100周年を迎えた日本赤十字社に対してギリシャ赤十字社から贈られた挿し木の苗のうち、1本を譲り受けたとされる。コス島の原木から直接株分けされ
た苗木は、日本国内では7系統(05年12月時点)しか確認されていない。
この年には“望外の付録”も贈られた。78年11月に行われた九歯大の創立60周年記念式典を前に、当時の池尻茂学長(故人)が6月、コス島の市長を表敬訪問。市長は、島内にあった巨岩を指さし「これを記念に持っ
て帰ったらどうか。貨物船で届けるから」と池尻学長に持ちかけたという。
数カ月後、巨岩は本当に門司港へ届けられた。高さ約2・2メートル、幅約2・1メートルの団子形。九歯大は巨岩の真ん中に池尻学長の自筆で由来を記したプレートを埋め込み「ヒポクラテス顕彰碑」として60周年記念
式典で苗木とともに披露。翌年3月からは卒業生による「ヒポクラテスの誓い」の宣誓も始まった。
この「誓い」は、医療人の倫理模範とされる。▽病を治すのは自然であって医師は自然のしもべ▽どんなに強い圧力があっても医学的知識を悪用しない▽患者の利益第一▽人種や身分、男女の違いで差別待遇しない
▽患者の秘密厳守--などがその内容だ。
さらにヒポクラテスは▽医師になるにあたっての心構え(専門機関での卒前教育)▽一人前の医師になるための教育(卒後教育)▽よりよい医師になるための教育(生涯教育)▽生死に関する教育(死亡教育)--など
を提唱。「医の本質」として「人生は短く学術は長い、機会は逸しやすく経験は欺き、判断は難し」という著名な言葉も残した。
九歯大では1年の歯学概論や5年の医療倫理の講義で「ヒポクラテスの誓い」を学ぶ。創立70周年に制定した大学のシンボルマークにはスズカケの葉を図案化。06年に完成した新講堂の正面にある4本の大きな柱に
は、ヒポクラテス本人とその木、顕彰碑、「人生は短く……」のギリシャ文字などをデザインした。その新講堂では今年3月も、卒業生109人の代表が「誓い」を宣誓した。
すくすくと育った木はその後、福岡歯科大(福岡市早良区)に株分けされ、さらにそこから福岡大(同市城南区)に“孫分け”された。九歯大の巨木は今年11月までに、現在のキャンパス北西角から、中央に造られる築山
に移設される。「まずは枯らさず移すことが第一」という福田仁一・九歯大学長は「今の学生が(ヒポクラテスの医の倫理を)十分肌で覚え、実際に患者さんを診る時にその精神を忘れないでやってもらいたい」と期待を込
めた。
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