ID : 5928
公開日 : 2008年 1月 6日
タイトル
熟成の社会へ(5) 「身の丈」の暮らしから
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新聞名
信濃毎日新聞
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元URL.
http://www.shinmai.co.jp/news/20080106/KT071229ETI090001000022.htm
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元urltop:
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写真:
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しゅんしゅん。ストーブにかけたやかんから、湯の沸く音がする。湯たんぽに移して、ふとんに入れ、眠りにつく。
じゃぼじゃぼ。湯たんぽの湯を朝、洗面器に移す。顔を洗うのに適温だ。わずかな省エネと再利用だけれど、地球環境を守るのに少しは役立つかもしれない。そんな思いから愛用している。
温暖化により、地球は各地で悲鳴を上げている。世界の森林や魚の資源も限界にきている。ごみによる地球汚染も深刻だ。このままでは手遅れになる。国際的な枠組み、国や企業の対策に加え、個人や地域が足元か
ら取り組みを強めるときだ。
<地球発熱にカルテ>
地球の温暖化は、二酸化炭素(CO〓)など温室効果ガスが増えることによって引き起こされる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年、6年ぶりに発表した報告書によると-。
今後20-30年の努力と投資が、気温上昇を低く安定させられるかどうかに大きく影響する。
対策の厳しさに応じ、今世紀末の気温は20世紀末に比べ1・1-6・4度の範囲で上昇。海面も18-59センチの範囲で上がる。
高波や洪水、氷の解け出し、農作物の収量減などの恐れも高まる。
どの警告も重い。
インドネシア・バリ島で開いた気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)が、京都議定書に定めのない2013年以降の新たな枠組みづくりを始めることで合意した。
京都議定書を離脱した米国も枠組みづくりに加わる。意見の違いも大きい。今年7月に北海道洞爺湖で開かれる主要国首脳会議(サミット)で歩み寄れるかどうかだ。
<地域で工夫凝らし>
国内の削減も正念場だ。京都議定書で日本は、ガス排出量を1990年比で6%削減することが義務付けられている。排出量は減るどころか増えている。国が思い切った施策にかじを切るべきときにきている。
個人、家庭、地域、職場で「身の丈」にあった行動を起こすことが求められる。
地域や企業の取り組みで、なるほどと思えるものも出てきた。
例えば、県地球温暖化防止活動推進センター主催の「信州減CO〓(げんこつ)づくりコンテスト2007」である。
最優秀賞は、飯田下伊那地方の事業所でつくる「地域ぐるみ環境ISO研究会」だった。京都議定書発効の記念日や環境の日に温暖化防止の一斉行動をしている。ノーマイカー通勤など活動は多彩だ。
優秀賞は、出資者を募った太陽光発電(飯田市)、諏訪市を拠点とした「信州省エネパトロール隊」。
努力賞は▽まき風呂、まきストーブ導入(長野市信里地区)▽企業と小中学校が一体となった、ペットボトルキャップ、プルトップ回収(塩尻市)▽市民による、ミニ水力発電と菜種オイルやバイオ軽油の普及活動(大町市
)だった。
信州に豊富な再生可能資源や水をうまく生かしている。活動によって地域が自信を持ち、活性化する効果もある。各地に広げたい。
食卓には、資源枯渇の影が差している。マグロ、タラ、サバなど魚の減少が日本周辺も含め世界的に深刻だ。海や沿岸の環境破壊と乱獲が原因である。日本は多くの魚を捕り、輸入もしている。資源の保全と回復の先
頭に立つべきだ。
伐採や農地化による森林減少がインドネシアやブラジルなどで目立つ。二酸化炭素吸収力が減り、生物の多様性も脅かされる。違法伐採の取り締まりと、伐採をしなかった時に経済的利益が得られる仕組みを国際社会
が早く築く必要がある。
日本は、木材を大量に輸入している。もっと国産材を建築やバイオ原料として活用する工夫を凝らすべきだ。山村活性化につながる。
<「もったいない」>
省エネ製品を積極的に取り入れたい。冷蔵庫、テレビなど省エネ型に買い替え、白熱電球を電球形蛍光灯にする。ガス排出の少ないハイブリッド車に乗る。断熱材で住宅の冷暖房を効率化する-などだ。
生活スタイル自体も見直すときだ。大量生産、大量消費、大量廃棄がごみ問題となって表れている。廃棄物の発生抑制(リデュース)、再利用(リユース)、再生利用(リサイクル)の3R運動を徹底させたい。日本の昔から
の言葉では「もったいない」の心だ。
ノーベル平和賞受賞のケニアの環境運動家ワンガリ・マータイさんもこの言葉に共感し、包装ごみを出さない風呂敷を世界に紹介している。
工夫の余地は幾つもある。地元の農産物を使う地産地消は運搬エネルギーを省き、地元経済も潤う。
レジ袋代わりの「エコバッグ」も有効だ。松本市の成人式では、不要になった布や糸で作るオリジナルエコバッグを記念品として贈る。
持続可能な社会とするために、日本は省資源、省エネの技術革新を一層進めるべきだ。途上国の役にも立つ。その技術と「もったいない」の精神で危機を乗り切りたい。
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