ID : 5724
公開日 : 2007年 12月11日
タイトル
膳の割り箸から考える国内山林問題
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新聞名
IBTimes
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元URL.
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/071211/14974.html
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元urltop:
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写真:
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5.割り箸の国産化への可能性と課題
では、国内で割り箸を大量生産することは可能なのか?実は、現状の数字だけをみると、そのような環境にはない。なぜなら、割り箸は日本固有の文化として誕生したにも係らず、近年の外食産業の進展から国内では
需要を賄い切れず、海外に技術移転した結果、現在では消費量全体の98%を海外に依存するまでとなっている。なかでも、中国が99%を占め、割り箸=中国産という図式となっている(図2)。
しかし、割り箸の国産化への追い風が供給側の中国から吹き始めているのである。それは、一に中国国内の森林保護政策により、木材製品に大幅な輸出関税がかけられ、その結果、年々割り箸の価格があがっている。
また、この森林保護政策に絡んでは、日本向け割り箸の輸出をストップすべきという論調もにわかに高まっている。さらに近年、中国製品の安全性が世界的な問題となっているが、割り箸に関しても、製造工程での大量の
薬品(防カビ剤としての二酸化硫黄等)使用が問題となっている。すなわち、国産割り箸復活のチャンスというよりも、国産化せざるを得ない状況になりつつあると言ったほうが的確かもしれない。
実は、既に国内で背板や間伐材から割り箸を製造し、立派な活動を行っているNPO団体がある。それは、JYUON(樹恩)NETWORK(事務所:東京都杉並区)という団体で、全国3ヶ所の工場で割り箸を作り、60以上の大
学生協などに納入している。特にこのNPOの活動で注目すべきは、地域の森林組合と連携し、割り箸の原材料(背板)を確保するとともに、地域の身障者の雇用にもつなげ活動している点にある。すなわち地域内の一つ
の産業化、特に山林を意識した環境産業としての割り箸の可能性を示すものとして注目に値する。
ただし、割り箸の国産化は一筋縄ではいかない。まず外食産業界、コンビニ業界などの多量割り箸使用業界が、(年々差が縮まりつつあるとはいえ)いまだ割高の国産割り箸の利用に踏み切れるか。また、それらの業界
が中国以外の第三国での製造に切り替える可能性もある。そして、仮に多くの企業が国産に切り替える意欲を見せた場合に、その需要に既存割り箸業界が機械化を進めるなどし対応できるか、あるいは新規の参入事業
者が現れるのか、といった課題も残る。さらには、こういった動きを国などの公的機関が積極的に支援するような動きがとれるのか、といった点もある。
6.割り箸が映し出す日本が抱える諸問題
ここまで述べたように、割り箸の国産化を考えることは、木の直接的な利用につながるため、山林問題解決の一ツールとなることは理解していただけると思う。そして、割り箸という誰もが身近に感じるものゆえに、山
林問題を考える入口となれる可能性があることもすでに述べた。
そして、さらには割り箸の利用を促進することが、「保全=触らない」あるいは「リサイクルこそ環境保全」と考えがちな社会へ一石を投じる機会、あるいは、「口にいれるもの」である割り箸が、多くの食品で問題となっ
ている安全性への懸念、産地不明といった課題を考えるきっかけを与えてくれる。さらに言えば、割り箸を使う企業としては、CSR(企業の社会的責任)とも密接に関わってくる話ともなってくる。
たった一膳の割り箸が、日本が抱える様々な問題を映し出す鏡になることを考えると、「たかが割り箸、されど割り箸」といったところである。
おわりに
身近なものでありながら体系的な情報・データが少ない「割り箸」というテーマを追いかけるなかで、多くの方々にご協力いただいている。特に、森林ジャーナリストの田中淳夫氏には、11月26日(月)に弊社が主催した割
り箸問題をテーマとしたシンポジウムの講師、パネリストとしてご参加いただいたほか、様々な場面で知見をいただいている。この場を借りて、御礼申し上げる次第である。
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