ID : 5712
公開日 : 2007年 12月10日
タイトル
温暖化の脅威…「ツナミが空から落ちてくる」
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新聞名
イザ
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元URL.
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/asia/108861/
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写真:
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世界の屋根ヒマラヤ山脈の斜面に、へばり付くように位置する小国ブータン。豊かな森林に覆われた同国は、海面上昇におびえる必要もなく地球温暖化の問題とは無縁のようにみえるが、実は国家そのものが
破綻(はたん)しかねない危機に直面していた。首都ティンプーで会見したキンザン・ドルジ首相(56)が恐れていたもの、それは「空から落ちてくるツナミ」だった。(ティンプー 藤本欣也)=(藤本記者のブログはこちら
)
■8.5倍
「ヒマラヤの氷河がこれまでにないスピードで溶け始めているんだ。わが国北部の氷河湖が決壊する危険が高まっている。恐ろしいことだ」
民族衣装をまとったドルジ首相は身を乗り出し、こう切り出した。
ブータン北部には氷河湖が約2670あり、うち決壊の危険性を指摘されている湖は25ある。ルナナ地域のラフストレン氷河湖(標高4360メートル、面積124万平方メートル)も危険な氷河湖の1つで、氷河の融解水が
増え、過去5年間で8・5倍に膨らんでいる。
ひとたび決壊した氷河湖の水は河川沿いに一気に流れ落ちるが、ブータン国土の南北の標高差は実に7000メートルもある。「空から落ちてくるツナミ」と、ヒマラヤ周辺国で恐れられているのもうなずけた。
ブータンの南にはインド東部とバングラデシュの低地が広がる。一国だけの問題ではないのだ。
■大土石流
実際にブータンでは氷河湖決壊による大災害を経験していた。1994年10月、ラフストレン氷河湖付近のルゲ氷河湖が決壊し、古都プナカ(標高約1300メートル)などに土石流が押し寄せた。プナカでは川沿いの歴
史的建造物のゾン(寺院兼役所)などが破壊され、21人が死亡したという。
「洪水がたくさんの木材とともに流れ込んできた。高台に走って逃げたのを覚えているわ」
当時女子高校生だったチミレムさん(28)は振り返る。
九州ほどの広さのブータンは国土の約73%が森林に覆われているが、徹底した森林保護政策を進めている。木材の伐採を制限し、焼き畑も原則禁止した。ブータンでは急流を利用した水力発電が基幹産業で、インド
への電力輸出が国家収入の4割を稼ぐ主要な外貨収入源だ。森林保護の背景には、水力発電の安定供給を維持する狙いもある。
ヒマラヤ地域では毎年0・09度ずつ気温が上昇しているとの観測データがあり地球温暖化の影響とみられている。このままでは28年後にはヒマラヤの氷河がすべて溶けるとした国連報告書が今月公表され衝撃を与
えた。
■支援訴え
ドルジ首相はインドネシアで開催中の国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)について、「大規模な氷河湖が決壊すれば水力発電はもちろん、(就労人口の9割の)農業が壊滅的な打撃を受ける。決壊を
防ぐための技術・財政支援を先進国に求めるほかない」と期待を寄せる。
ブータンは、国家の発展の度合いを国民総生産(GNP)でなく、国民約70万人の「幸福」によって測る国民総幸福量(GNH)を生み出した国でもある。ドルジ首相はGNHに基づく発展の柱として、(1)健全な経済成長(
2)文化の保護・振興(3)環境保護(4)よき統治-を挙げ、こう強調した。「氷河湖の決壊は、何よりもこのGNHによる国造りへの脅威なのだ」。
緩やかな独自の発展を模索してきたブータンにも、地球温暖化の波が容赦なく押し寄せていた。
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