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ID : 6050
公開日 : 2008年 1月21日
タイトル
「足尾の山に百万本の木を植える!」よみがえる 森・いま、私たちにできること
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801209220/1.php
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元urltop:
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写真:
 
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足尾銅山は1610年に発見され、江戸時代、幕府直轄の鉱山として営まれました。1877年に古河市兵衛が足尾銅山を買収し、市兵衛は西欧諸国の技術を導入して足尾銅山を日本一の銅山にしました。日本の 近代化に大きく貢献した足尾銅山ですが、その一方で、「足尾鉱毒事件」に象徴される鉱害問題を生み出し、渡瀬川流域の住民に深刻な被害をもたらしました。
 江戸時代から昭和48年に閉山するまで約400年に渡り、銅の精錬による木材の消費で森林が失われた足尾銅山は、銅の煙害と水害で荒廃し、樹木が育つための土壌を失いました。その荒廃地に再び緑を取り戻すた め官民が協力し、足尾に緑を蘇らせ、豊かな森をつくるための取り組みが行われています。
 春の植樹デーに全国から大勢の人々が苗木と土を持って集まり、植樹をする様子や、足尾の山に再び緑を取り戻すために活動をしている人々の姿などを伝えるビデオ上映のあと、小野崎さんが、この緑化事業にかか わることになった経緯や緑化事業の状況などについて報告しました。
 小野崎さんのお話によると、足尾は教育熱心な所で、東京に足尾出身の学生のための学生寮があったそうです。足尾町出身の小野崎さんはその学生寮の一期生(「育てる会」会長の神山英昭さんも一期生)で、平成に なってOB会があったとき、お世話になった故郷に恩返しをしたいとの思いから、現在植樹活動の拠点となっている「大畑沢緑の砂防ゾーン」の見晴らしの良い東屋の近くに桜の苗木十本を植えたそうです。
 しばらくすると見事に枯れていたため、宇都宮大学農学部の谷本教授に現地を視察してもらったところ、谷本教授は「君たちはここに桜を植えて花見をしたのか。それとも、この荒涼たる光景を見てなにも感じないのか 」と問いかけたそうです。最初、OB会の活動として始めたことですが、谷本教授の言葉に啓発され、ただ、昔を懐かしむだけでなく、環境の問題として取り組んでいく中で大きな活動になっていったと語りました。
 いまでは春の植樹デーに全国から大勢の人が集り、年々その数が増えているそうです。ちなみに、平成8年から始まったこの植樹祭はこれまで12回開催され、合計35000本の苗木が植えられ、8300人の人が集った そうです。そのほかに、小学校や各種団体の体験植樹があり、その数も年々増えているということでした。
 足尾の緑化事業の歴史は古く、明治30年から続いているそうですが、緑化が進んだのは昭和30年に亜硫酸ガスがなくなってからで、現在50%の緑化が進んでいるそうです。ブナやナラなどを植えても生えてこない ので、ニセアカシアなど外国産の樹木を植え、岩盤に土を根付かせ、木々が葉を落して腐葉土となり、豊かな土壌作りをしてからブナやナラを植えるという、大変根気のいる取り組みをしているということでした。
 この緑化事業は、これまで国や県が公共事業として実施してきたそうですが、1996年から民間ボランティアが参加し、足尾のはげ山に緑を再現する活動が始まったそうです。「育てる会」会長の神山さんによると、民 間のボランティア団体が継続的、組織的に緑化活動に参加するのは歴史上はじめてのことだそうです。
 「足尾の山に百万本の木を植えよう!」をモットーに植樹事業を進めている「育てる会」ですが、1年に1万本ずつ植えても百年かかります。一度破壊された足尾の山を本当の自然の山にするにはさらに百年。神山さんも ビデオで訴えていましたが、小野崎さんも「我々の時代では終わらない。百年事業でやっている」と語り、この取り組みが何世代にも亘る、大変息の長い事業であることを強調しました。
会場の光景  緑化事業とともにNPO法人「足尾歴史館」の副理事長でもある小野崎さんは、修学旅行にきた学生たちに、木を植えるだけでなく、どうして鉱害が起きたのか、足尾の歴史を知ってもらい、その背景を知ることで、産業 の発展の過程で鉱害が起こったことを伝える活動もしているそうです。
 小野崎さんの夢は、足尾に蛍を復活させることだそうです。昔は足尾にも蛍がいたそうですが、いまは一匹もいないと語りました。小野崎さんは、「自分たちは草の根でやっている。東京とも連携をとりながら足尾の緑化 を推進していきたい」と述べ、緑化事業への協力を呼びかけました。
 小野崎さんのお話のあと、参加者から小野崎さんへの質問がありました。
質問  支援をしている企業はあるのか。また、(鉱害を出した)古河鉱業はこの活動にかかわっているのか。
答  イオングループが支援をしてくれている。日光市の中にもイオンがある(06年に足尾町は日光市に合併)。ほかに、東京電力、JR、企業、労組なども応援してくれている。谷中村、田中正造大学、公害グループが応援 してくれている。古河鉱業は我々の活動を知っているが、消極的だ。ただ、数年前、ボランティアの高まりでようやく協力姿勢を見せている。
質問  古河グループはどんな支援をしているのか。ビデオでサルや鹿がタネを食い荒らしているが、動物との共生についての考えは。  答  植林は古河の土地ではやっていない。国有地でやっている。足尾の大半は古河が所有している。やっていない。来年あたり、古河も緑化に取り組むと言っているのでやる。
 動物の共生については、足尾には木がないのでエサをあさりにくる。タネを食べられる。サルと鹿が増えている。網のフェンスをするなど対策をとっているが、昨年、サルの駆除を国土交通省がやったようだ。動物保 護団体から批判を受けつつやっている。クマも増えた。日光のほうからくる。クマは、怪我をして動けなくなり雪に埋もれて死んだ鹿や、蟻や蜂の巣を食べる。石の下に蟻が巣を作っている。かつては煙害で困っていたが 、いまは畜害で困っている。
質問  ビデオやお話を聞いていると、ボランティアの活動だけで企業の動きが見えない。
答え  被害は古河が作った。それを古河に真剣に考えてもらいたい。我々はボランティアでやっている。古河に向かって企業責任を問い質したが、返答はない。いまのところ、古河グループからもなにも言ってこない。古河に は企業の徳ということについて感じてほしい。古河に友人が2、3人いるので、声を大にして訴えているが、虚しい状況にある。
筆者の感想  足尾銅山というと、田中正造が鉱害で苦しむ人々のために生涯を捧げたという話が歴史の教科書に載っているほど、鉱害の深刻な被害をもたらした場所として知られていますが、小野崎さんのお話やビデオを見て思 ったのは、自然を破壊するのも、その破壊された自然と取り戻すのも人間であるということでした。
 参加者から、本来はその原因をつくった企業が行うべきことを国や民間がやっていることに、企業の責任を問う声がありましたが、その思いは足尾の山に再び緑を取り戻すために尽力している小野崎さんにとっても同じ であることがわかりました。小野崎さんは、産業の発展がもたらした負の遺産を後世の人々にも伝えるために、足尾銅山を産業遺産にすることを関係者に働きかけていきたい、と語っていました。
 なお、この講演会は、西東京市がNPO等とともに企画提案事業として行っている地球温暖化防止キャンペーンの一環として行われたものです。小野崎さんのお話のあと、身近な河川に豊かな自然を取り戻し、蛍が舞う ような多様な生物のすみかを子どもたちに残していくために、私たちができることとして、「身近な環境の再生」をテーマにワークショップが行われました。また、会場には昔の足尾銅山の写真パネルなどが展示され、参 加者が熱心に見入っていました。
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