文化財の森設定は、国宝や重要文化財など文化財建造物などに使われている木材や漆、屋根材の檜皮(ひわだ)や茅(かや)などの資材の安定的確保、漆掻(か)き職人ら関係技能者の育成が狙い。
浄法寺漆林は、二戸市浄法寺町明神沢の県有地4・17ヘクタールを市が無償で借り受け、管理している。1988年に約4000本の漆の木が植栽され、現在は漆採取の適期を迎えている。
浄法寺漆は、平泉町の中尊寺金色堂や京都の金閣寺など貴重な文化財の修復に使用されている。生産量は年間約800キロで、全国の6割ほどを占める。
設定を受け、漆振興を図る市は、市内に事務局を置く日本うるし掻き技術保存会など関係団体と連携し、漆掻きの見学会や体験などの活用も検討している。市浄法寺総合支所の中村裕プロジェクト推進室長は「文 化財の森設定を契機に、文化財修復などの場で浄法寺漆がもっと活用されるようになってほしい」と期待する。
岩手大滝沢演習林は、滝沢村滝沢の280ヘクタール。同大農学部付属寒冷フィールドサイエンス教育研究センターが管理している。
文化財の森に設定されたのは、アカマツ天然林の8ヘクタール。樹齢約160-170年、樹高約25メートルのアカマツ約200本が立ち並ぶ美林だ。生産量は年間約50立方メートルで、紙パルプや梁(はり)などに利 用されている。
沢口勇雄教授は「アカマツは岩手を代表する木で、今回の設定は大学、県にとっても誇り。若い後継の木を育てながら一層大切に保護していきたい」と決意を新たにする。
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