『新年おめでとうの巻』
今日10月13日は世界中で『新年おめでとう』の声が響いています。
昨日は苦しい一ヶ月に亘る断食を昨日の夕刻のお祈りと共に達成し、
胸一杯の満足感を持って家族と共に迎えた嬉しい嬉しい大晦日。
そして今日はイスラム正月の元旦なのです。
インドネシアだけでなくイスラム圏には暑い国が多いです。
暑い毎日をたとえ昼間だけとは言え水なく過ごす苦痛は断食を行った
者でなければ判りません。かく言う小職も判りません。
(小職は時々酷い二日酔いで食事が摂れず断食状態となるときが
ありますが、しかし、水だけは酔いを薄める ために沢山飲みます。)
断食は日が昇る前の明方のお祈りから日が沈んだあとの夕方のお祈り
までの時間に行います。
このごろはRAMADANというイスラム断食を判ってくれる人が増えて
きました。
それでも皆さんは断食という言葉からして、食事をしない修行と思って
おられるのではないでしょうか?
それも昼間だけのことで夜になれば自由に食べる、何のことは無い、
かえって胃に悪い修行だと思っているのではないでしょうか・・・
確かに日が出ている間だけです。
そうでなければ1ヶ月も続けられるわけが有りません。
しかし・・・、
日が出ている間の辛抱だから毎日二日酔いみたいなものだ、と思われ
てはイスラム教徒の方々に失礼です。
イスラムの断食は食事をだけでなく、水も摂らずタバコも吸わず、
人間が持っているあらゆる感情を表に出さぬようにする修行なのです。
これを日の出ている間だけとはいいながら一ヶ月に亘って毎日行うのです。
その間に営まれる生活は全くの日常生活であり、仕事もすれば学校へも
行きます。
暑い工場で汗をだらだら流しながら仕事をしていても水は一滴も飲めません。
唾液を飲み込むことさへもいけないといわれているぐらいですので。
勿論、休憩時間になってもタバコは吸えません。
・・・これが断食です。
食べれないことはそれほど苦痛ではありませんが水が摂れない苦痛は
凄いです。
朝8時から工場で仕事を始めれば10時ごろには喉がカラカラです。
10時の休憩にも水は飲めません。静かに座っている以外にこの喉の渇きに
耐える方法は有りません。
異教徒の同僚が横で美味しそうに水を飲みます。タバコをふかします。
口が粘り始め耐えがたき苦痛となって襲ってきます。
これが31日間続くのです。 まさに拷問です。
ひたすら夕方を待ちます。あと何時間、あと何分・・・
日が翳ってきますとそわそわします。もう少し、もう少し経てば水が飲める。
そうしてひたすら待ちわびるのが夕べのお祈りです。
運転手が運転席の横にペットボトルに入れた水を用意します。
勤め帰りの人は気もそぞろで歩くのももどかしそうです。
道の両側にはこの期間だけ認められる簡易屋台が出ます。
シュースを入れたコップや冷たい果物をテーブルに並べて時間が来るのを
待っています。
お祈りが終われば皆がこのテーブルへ飲み物を買いに来ます。
あとでゆっくり家族と食事をしますので取り敢えずは簡単なお菓子を口に
入れて空腹を癒します。ナツメの実などが丁度良いです。
飛行機内ではクッキーやカステラを配ります。
いよいよコーランが聞こえて来ました。
苦しかった時間からの開放です。
毎日このように断食明けの儀式があるのです。
いつ耐えれず水の飲んでしまうのか・・・タバコを吸ってしまうのか・・・
その恐怖や誘惑に耐え続けて一ヶ月目、いよいよ最後の断食明け儀式を
迎えたのが10月12日の夕刻なのです。
嬉しくないはずがありません。まさに自分を褒めたくなる一瞬です。
自分の中に潜んでいる崇高な部分に気付かされる一瞬です。
よくぞ耐え切った!!!、・・・と。
男も女も、大人も子供も、近所の人も職場の人も、皆同じ苦痛に耐えて
無事この日を迎えられたことをアラーの神に感謝します。
そしてお互いの偉さを認め合うのです。
『スラマット イドゥル フィットリ!・・・断食明けおめでとう!
モホン マアッフ ラヒール ダン バティン
・・・内面からも外面からも、誤りがあればごめんなさい』
このように誇らしげに言い合うのです。
水を飲んでしまった人は?、タバコを吸ってしまった人は?
今日をどのような気分で迎えるのでしょうか?