『食料か、燃料か?』
新年早々の1月4日中日新聞朝刊『資源有事』なる記事中に
実に重い問題提起がなされておりました。
『食料と燃料の綱引き…』
先進国のエネルギー不足、後進国の食糧不足。
いずれも避けては通れない地球的規模の大問題です。
『腐らない夢の素材』…、プラスチックが発明されて以降
梱包資材、食器、家具、あらゆる日常に化学樹脂製品が
溢れかえりました。
腐らないと言う利点がじわじわと我々の首を絞めております。
腐らないが故に廃棄が出来ない。
地上に何時までも残るが故に生物と生態系に悪影響を
及ぼしているからです。
夢が悪夢に変わったのです。
腐るプラスチックを開発せねば!
そして生分解プラスチックが出来ました。
デンプンを使って樹脂を創り出のでこれは腐ります。
バイオプラスティックとしてもて囃されました。
(なんのことはない、ただ腐るだけ、なのに…。
)
しかしここへ来てデメリットも見えてきました。
デンプンを使うので食用と競合するのです。
世界にはまだ飢餓があり、それ故に死んでゆく人々が
おります。
ただ腐るというメリットを享受せんが為にこの人達から
食料を奪ってもよいものか!
かつてジャワ島で芋から生分解ブラスチックを作ろうと
した有名自動車メーカーのプロジェクトが非難を浴びた
そうです。
石油の高値安定を受けて化石燃料に替わるエネルギー源
探しが活発になってきました。
その中でも今、注目を集めるのがバイオエネルギーです。
バイオエタノール、バイオディーゼル、石油輸入国の日本でも
チラチラ耳にするようになりました。
しかし、何と、何と!
驚くことに産油国であるインドネシアの方がもっと真剣にこの
問題を検討しているのです。
不思議と言えば不思議なことですが、一旦原油を輸出して
その後精製された石油製品を輸入しているからです。
故に、原油輸出で得た貴重な外貨が石油製品輸入で流出
するのを少しでも防ぐ為に自国で作れる燃料の開発が急務と
なっているのです。
ならば精製設備を国内に作って自国原油を自前で精製すれば
よいではないか?、と考えるのはインドネシアを知らない人の
発想です。
…(理由は弊ネシア通信『産油国で燃料不足?』をご覧下さい。
)
手っ取り早いエネルギー源として石炭を掘り出しました。
インドネシアは石炭もダイヤモンドも露天掘りです。
かつて木材を伐っていたカリマンタンの山が石炭キャンプに
化けました。
木材を運ぶ林道が石炭を運ぶ道となりました。
原木を運んでいた艀は石炭を運ぶバージに替わりました。
数多くの林区所有木材会社が石炭屋に職替えしました。
池と云うにはあまりに大きく、湖と云うには少々小さい穴が
あちこちに出来ました。
もう少し環境に優しい代替えエネルギーは無いのか…、
と言うので木や草から取れるバイオエネルギーが着目されました。
既にバイオディーゼルを使って走るバスがジャカルタ市内で
見受けられますし、それにバイオソラル(ディーゼルのこと)を
給油するガソリンスタンドもジャカルタ空港敷地内で見ました。
しかし、これも生分解プラスチックと同じ矛盾を抱えております。
材料である芋(シンコン)、サトウキビ、トウモロコシ、パーム椰子
の実、どれをとっても食用になるのです。
金持ち(先進国)が快適な暮らしをせんがために、
貧しい人(開発途上国、未開発国)の必需品である食の糧を
燃料として使って良いのか!
これは非常に分かり易い矛盾の指摘であり、新たなる南北
問題の勃発にも繋がる重い話です。
そこで救世主の登場です。
その名は…”JARAK PAGAR”
元々は柵替りに植えていた木です。
土地の境界を示す柵だと言うのでJARAK(距離)PAGAR(柵)の
名が付いたそうです。
この木にも実はなるのですが、これが不味くて食用には適さない
のだそうです。
(ジャワ人が『鳥も喰わない』、と言っておりました。
)
乾燥地にも育つと言うことで昔からジャワ農民が家の側に植えて
いた木だそうです。
この木の実から取れる油がバイオディーゼルの原料になるのです。
これがジャラックの木です
Jarakを使ったバイオディーゼルのポスター
Jarakの実と搾りかす利用燃料
食料にならないのであれば矛盾は生じません。
燃料に使っても指弾されないでしょう。
正々堂々とバイオディーゼルが作れます。
インドネシアの大財閥、サンプルナグループが大統領府の命を受け
JARAKのバイオ燃料化に取り組む、という未確認情報もある位です。
年産5000トンのバイオディーゼル試験プラント
バイオディーゼルで走るバス
かつての木材は燃料でした。
それが家や家具を作る用材となり、また燃料源に戻って行くのです。
しかも今度は、『使っても使っても枯れない』永久機関のような理想の
燃料源として…。
近将来はブラジル(アマゾン)とインドネシア(熱帯降雨林)が2大植林
(油)田となるかも知れませんよ…
そして我々木材屋は、燃料メジャーへの華麗なる変身を遂げるのです。
2007年の初夢でした。
今年も宜しくお願いします。