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神谷のインドネシア点描

追憶タラカン 『ロマンティスト』の巻き

『許せないのよ、今夜の貴方、 今頃どうして、いるのでしょうか?  きっともててる、優しい笑顔、 私が選んだネクタイで…  あーどうして、どうして貴方、 そんなに浮気なの?』 いつもロングボートの舳先に座りハリマオかぶりで歌ってました。
歌い手知らずのマイナーな歌謡曲を。
海を見ても岸のジャングルを見ても何もありゃしません。
しかしそこに何かを見ていたのです。
おりもしない理想の彼女を。
男は元々ロマンティストなのでしょうか…赤い糸で結ばれている彼女の存在を信じ いつかその人に会える、と思ってました。
その人に男っぽい自分を見せたいが為に危険を顧みず仕事に精を出しました。
惚れ惚れする男っぽさを演出しました。
いつかその人に見せられると思って。
見も知らぬ人なのに…なぜか居ると思いました。
なぜか会えると思いました。
その為にも男らしくあらねばならぬと堅く信じ込みました。
女性はみんな純情で、触れれば壊れるガラス細工のようなものだと思ってました。
遠くから眺めるものだと思ってました。
理想の女性に思いを馳せて見つめ続けた岸辺のマングローブ。
サルが居ました。
切なくなるほど純粋だった頃。
見えぬからこそ恋した想像の女性… 『男おいどん』のように純朴な20年前の南国メルヘンです。
  追伸) 多かれ少なかれこのような想いを抱かれたことは有りませんか? それとも小職だけの思い出でしょうか?   岡崎にて

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