めぐすりのき
学名がAcer nikoense Maximowiczで学名に日光という日本の地名が入っている。これは江戸末期にロシアの植物学者マキシモウイッチが来日時に助手の須川長之助を使って日
本各地の植物採集を行っていたが、日光でこの植物を採取したので、命名したという。
高さ10m、直径40cm、時には高さ25m、直径70cmにもなる。
山形県、宮城県以南の本州、四国、九州に分布する。湿帯の湿気ある肥沃地を好み、本州では海抜700メートル前後の山地(谷間や中腹の緩傾斜地)で
育つ。福島、群馬、栃木、茨城などに比較的多い。日本にだけ自生し、欧米では「日光カエデ」(Nikko
maple]と呼ばれ、貴重な木となっている。
>別名に長者の木、千里眼の木、ミツバハナ、、鳥足(とりあし]、オオミツデカエデ、メグロ、コチョウノキ、チョウノキ、などがある。チョウジャノキの別名は、若い枝に長白毛があり、翼果にも粗い毛が
あり、長者のようだという説があるがこじつけと思う。おそらく特徴のある三枚の小葉を蝶の舞う姿にみたてたものか、4~5cmの大きな翼果が風に舞うこと
から、蝶の木となり、これが転訛して長者の木となったのではないかと思う。
また葉が三出複葉なので三葉楓(みつばかへで]とか、「ミツバツパナ」と呼ぶ所もある。
この三出複葉のカエデが日本には二種ある。メグスリノキとミツデカエデ。メグスリノキには、葉柄および葉の裏に灰白色毛が密生しているので、区別できる
が、名前がよく似ているので混同しやすい。関東秩父地方では材の堅い「メグスリノキ」を「イシッピャータ」、材の柔かい「ミツデカエデ」を「オガラッピャータ」
と呼んで使いわけている。
花は5月頃に、若葉といっしょに白い花を枝先に2~3個つける。 秋には美しく紫紅色に紅葉する。実は10月に成熟、枝頭の葉腋に下る。
若木の成長は早く、1年で70センチ以上の背丈になる。幹は真っ直ぐには伸びないため、木材の用途としては不向き。しかし材質は堅くて丈夫なのでオノの
柄などの器具材に使われる。打ち下ろした時の手への衝撃を吸収する性質がある。
メグスリノキは昔から樹皮を煎じて服用し、眼や肝臓などに効果がある民間薬として重宝されてきた。特に洗眼用として民間薬で賞用されているのでこの名
がついた。明治降は西洋医学の世の中となり、存在感が少なくなってきたが、最近、その成分が肝機能の改善効果があるとして再度見直されている。
この木は戦国時代から使われていた。江戸時代初期には、京都、播磨、福島の相馬地方などで眼病の特効薬として評判になっていた。司馬遼太郎の「播
磨灘物語」には、黒田官兵衛の祖父である重隆が室町末期にメグスリノキで目薬を作り、黒田家の財構築に貢献したと書かれている。
- 学名
- Acer nikoense
- 科
- かえで科
- 属
- カエデ
- 英名
- Nikko maple
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