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新・木偏百樹

むくのき

高さ20m、直径1mにもなる。
暖帯樹で本州中南部、四国、九州、台湾、朝鮮、中国、インドシナの暖帯から亜熱帯に分布。山地や川沿いに生える-----。
耐風性があるので人家付近に植えられてきたようである。強靭で根も深いが、最近は少なくなってきているのは、環境悪化のためかも知れない。
名前の由来はいつくかあるが、一番説得力高いものは、木工品の材料から研磨まで、さまざまな木工(むく]の用途に利用されたために、ここから転訛したというものである。
木工という文字は木工頭(むくのかみ]、木工の助(すけ]などのように、つい最近まてせ「むく」と呼ばれ、のちに「もく」となった。
ムクノキと各地で見ることができるムク鳥とはどちらか先にムクを名のったか調べたが、かなり古い辞典にも「椋鳥(ムクドリ科] はムクノキの果実を好むところからいう」と記してあった。
エノキとは昔からよく間違われる。私の父でも長い間、豊中の自宅には榎が二本あると思っていたが、後に調べてみると、むくのきであることがわかったと いう。確実な見分け方は実で、エノキは赤褐色に塾する。また葉は、ムクノキの鋸歯はムクは全体にあるし、ザラツキがある。また立ち木ではムクはラワン やサキシマスオウにあるような板根のようなものが根元にあり、円形に近いエノキと異なる。 この、似ていることからのことわざがある。「榎の実はならばなれ、木は椋の木」、「椋はなっても木は榎」は、一度椋の木と言い出したら、たとえ榎の赤い実 がなっても、木は椋の木であると主張することで、自分の言い出したことを、通そうとすることのたとえに使われる。
巨木でもむくのきは多い。私の訪問したものでよかったのは、日本で二番目に大きい、三重県芸濃町椋本の「椋本の大ムク」である。幹周りは約9Mもあり、 国の天然記念物に指定され、それにふさわしく威風堂々としている。立派に管理されていて、地域とともに大事にされてきたことが地名にも表れていてよくわ かる。むくのきは心材が腐りやすいので、巨木となつているものの多くは、空洞になっていて、昔なら子供の遊び場だ。そのため、この空洞に絡んで、各地の むくのきの巨木にはその地区のいいつたえがある。
かっては鍬やシャベルの柄などの器具材,運動具材,車両材,船舶材,三味線の胴、木銃、滑車、天秤棒、馬の蔵、野球のバット、薪炭材。銘木材としてした ん、こくたんなどの模擬材とされたり、時には皮つき丸太として小さい部屋の床柱などに利用された。
葉には炭酸石灰が含まれる微細な毛がびっしり生えていている。葉を十分乾燥したものは桐だんすなどの家具、象牙、角、骨などの仕上げ研磨に使われ る。カンナで表面仕上げをし、トクサですった後、最後の仕上げにこの葉でみがくのである。
学名
Aphananthe aspera
にれ科
ムクノキ属

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