ぶな
掬、山毛、別名シロブナ。ほんぶな。しろぶな。そばぐり。ソバノキ。
ブナは日本の落葉広葉樹林を代表する樹木で、北海道中部から鹿児島県高隈(たかくま]山までの冷温帯と呼ばれる場所に分布。ほとんどが天然林で日本の広葉樹のうちで最も蓄積が多く四分の一を占める。ブナの森は
生物の宝庫で、保水力が強く、水源林として大切にされている。岩手県と山形県にまたがる白神山地は、ブナ帯の象徴として、世界遺産に指定された。
堅果は食べられ、また灯油・食用油がとれる。クマは皮ごと、サルは丹念に一粒ずつ皮をむいて食べている。生でも味わえ、乾燥させて軽く煎っると香ばし
い。ブナは4~7年に1度、大量に実をつけることがあり、足の踏み場もないほどに散らばる。このときはノネズミが大量発生すると言われている。
日本のブナはその時代の都合でその人生を翻弄されたかわいそうな木と思う。大正時代まで、薪や家庭用の日用品として加工され、産地あるいは消費地
でほそぼそと利用されていたぐらいであるが、戦争中は飛行機用の木材や、パルプ材として急遽伐採され、戦後は住宅政策の犠牲になり、スギにとって変わ
られた。しかし、蓄積が多いことと他の広葉樹資源の不足などから、その利用技術が改善され、数十年前から一躍重要な木材工業の原料になった。ブナの
よさがわかるといっせいに使われだし、現在は天然林は少なくなった。
木材の加工性は中庸だが、乾燥によって狂いが出やすい。生の材では保存性は特に低く、菌に犯されやすい。用途は弾性・従曲性に富んでいるので曲木
にし易い性質があり、曲木家具に適する。その他、靴木型、運動具材、漆器木地
玩具、曲木、船舶材、ピアノの部材など。パチンコの裏板には最適である。パチンコの発達とブナは一緒に歴史を刻んだ。玉が走る化粧板の裏にはブナ合
板が使われていた。真鍮の釘の保持力がいいし、なによりも音がいいのである。いろいろな木を先人たちは試したが、ブナ合板が一番という。
名前の由来ははっきりしないが、ナラでないので無楢(ぶなら]からの転化、すぐに腐って無くなるので、?、また、木に吹く風の音がブーンと聞こえるので、ブンナリの木説もある。ブンナとかブンナ
グリの方言が残っている地区もある。
私は高校時代にオーディオセットを組み立てた、当時からオルトフォンはカートリッジの高級品で手が出なかった。今年、オルトフォンジャパンの創立85周年
記念で、世界初の木製カートリッジを発売したが、主要オーディオ誌5誌の全てで賞を受賞した。オークビレッジとの協同開発である。
小塩節さんの日本エッセイクラブ賞受賞の「木々を渡る風」には日本とは異なるドイツのブナの知識か書かれている。ドイツのある営林署長さんの話を紹
介している。「森でにわか雨になったら、ブナの陰に寄れ、しかし、しばらくしたら離れろ。大量の水がざあと落ちてくる」とある。木が漏斗(ろうと]のようになっているのだ。樹冠の直径15メートルほどの木一本で葉の数60万枚あるという。総面積1200m2あるという。
- 学名
- Fagus crenata
- 科
- ブナ科
- 属
- フナ属
- 英名
- Siebold’s beech
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