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新・木偏百樹

あんず

杏(アンズ)、杏子(アンズ)、加良毛毛(カラモモ)、唐桃(カラモモ)、刺杏(シシ)、寿星桃(ジュセイトウ)、江戸桃 (エドモモ)、巴旦杏 (ハタンキョウ)、 アプリコットとも呼ばれる。、 中国山西省、山東省の山岳地帯、および中国東北地方の南部が原産。中国では最も古い果樹のひとつ。中央アジアでは乾燥アンズにして世界に広めた、 このため、原産地がアルメリアだと思われ、 学名に使われている。ヨーロッパへは、アレキサンダ大王がギリシャに伝えたのが最初とされている。米国に18世 紀に伝わり、今やカリフォルニア州は世界一の産地となっている。
万葉集に加良毛毛(からもも)と記述されており、平安時代にはカラモモと記載され、その後の「本草和名」、「和名抄」には杏子と書き、カラモモが和名になっている。杏子を 唐音読みてアンズとなったのは鎌倉時代や江戸時代といわれているがはっきりしない。当初薬用として入り、鎌倉、徳川時代を経て栽培されていたのであろ う。
私の前職の同窓会があり、その会社の長野の別荘に、何度か行った。ちょうど駅まで帰るルートに善光寺があり、立ち寄ったことがある。そこで芭蕉の俳句 を彫った石碑があり、「善光寺の鐘のうなりや花一里」とあり、聞いて見ると善光寺の鐘の音が聞こえる範囲の土地には良質のアンズができると伝えられて きたという。実際、長野県更埴(こうしょく)市の森・倉科地区はアンズの里として有名で、春の杏子祭には多くの観光客が集まる。
蕾は淡紅白色、花は白色、春四月に開く、果実は主に加工され、シロップ漬け、干し杏、ジャム、果実酒、砂糖漬けなどに使われる。
実は西洋では「黄金のリンゴ」と言われている。また、聖書に出てくる禁断の木の実(知識の木、善悪を知る木 創世記2章)は、一般にリンゴとなっているが、金のリンゴ(箴言25章11節)という表記もあり、当時黄色のリンゴがなかったことからも、黄色に熟すアンズだとする説も有力である。
堅い穀の中に仁(あんにん)という種子をふくむ。種子は熟すると果肉から完全に離れる。種子を集めて日干しにするが、これを杏仁(きょうにん)という。大阪道修町(どしょうまち)にはあんにん専用の薬問屋まである。
父の母方(羽山家)の里が医家で、杏花堂と呼び、家紋も杏であったので。父は祖父の羽山大学(はやまだいがく)の哲学は「医は算術でなく仁術だ」と誇らしく言っていた。
「ブンゴウメ」などのようにウメともよく交配し雑種ができる。ウメとはきわめて近縁で、日本ではウメが格段に普及しているのに、欧米ではウメの利用は皆無 で、アンズが普及している。
対照的である。食生活と嗜好の相違によるものだが、おもしろい。
室生犀星の長編小説に「杏っ子」というのがある。娘を愛する作家の自伝的小説とも思って読んだが、杏子(きょうこ)の子供から成長し、結婚し、破綻していく過程を、じっと見守り我慢する感覚は、とても同じ娘をもつ父親としては、割り切れない。娘と友人のよ うにしているのは同じだが。
材は辺材が黄白色、心材は灰褐色で硬く、緻密なので彫刻や細工物に利用される。
学名
Prunus armeniaca
バラ科
サクラ属
落葉小高木
英名
Apricot、Common Apricot

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