さくら
佐久良、
主に花を観賞する10種類の総称で、日本には12種の野生がある。ヤマザクラは山地に生え、高さ20メートル内外、葉は卵状楕円形で先はとがり、縁に鋸歯
がある。どの種の花も美しく、日本の国花だけあって、沖縄のカンヒザクラは1-2月、東北から北海道にかけて多いオオヤマザクラは5-
6月、北海道東部のチシマザクラは7月、特殊なものとしてフユザクラは11-12月が開花期となると、日本列島は1年中花盛りである。
万葉集に「梅」は120首、「桜」は46首からもわかるように奈良時代、花といえば「梅」。
平安時代にはいって「桜」が日本人の心という位置付けとなったようだ。一般に庶民が桜花を楽しむようになるのは江戸時代からである。
今、サクラといえば、ソメイヨシノ。その「染井吉野」は東京巣鴨染井村(現 豊島区巣鴨)の研究熱心な植木職人の伊藤が大島桜を母と江戸彼岸桜を父として交配したもので、開花時に葉も展開し始めるヤマザクラなどと違って、葉
が遅れるソメイヨシノは花が豊かに見えることから人気となったのである。しかし、このサクラは母、父の強さを持たず、高温や病害虫に弱く、寿命が短い。ま
た種子はできず、接木で増やし、すべて遺伝子的に同一のいわばクローン種のため、気象台や測候所の標本木となっている。
私が小学生から社会人になるまで住んでいた豊中の家では庭の真ん中に立派なサクラの木があった。父がたいそう気に入っていたが、台風で地上3メート
ルくらいのところで折れてしまった。その後、陶器の大きなすり鉢を逆さにして、その折れ口に乗せていたが、こっけいで美的センスもあったものではなかった
ので尋ねると、サクラの太枝の切口は腐りやすく、ここからシロアリが侵入し、繁殖してついには家を朽ちさせることになるからと答えていた。、「梅切らぬ馬
鹿、桜切る馬鹿」といわれる所以である。
桜餅に使う塩漬けの葉のほとんどは、伊豆半島、西伊豆の松崎町、とくに岩科川上流と那賀川上流で生産され、桜餅用のサクラの葉をとるためのオオシマ
ザクラ園が山あいに広がっている。1年に3億枚である。真冬の2月に、幹を地上10センチメートルのところで切っておく。春になるとこの幹から8-
10本のひこばえが伸びてくる。その枝についた展開したばかりの葉を、収穫するのである。葉が公園などに植えられたオオシマザクラの葉と比べ、1段と大
きいのは、このひこばえについた葉だからである。苗を植えて2年目から収穫ができ、収穫期は6月下旬。収穫した葉は、縦にたたんで、50枚を単位としてス
スキの葉でしばって出荷。また、桜餅の香りは、クマリンという物質であり有毒物質である。クマリン自体に問題はなく、クマリンが次第にジクマロールという
物質に変化し有毒となり、強い溶血作用をもつのである。では、どうして容認しているのかというと、この物質は数日間食べ続けないかぎり問題がないとされ
ているからである。
薬効として、咳止めには、樹皮を煎服。食中毒の解毒作用もある。おできには、樹皮を煎服または煎液で患部を洗う。
木版画の版木は板木とも書くが、日本ではヒノキ、ツゲ、ホウ、などが使われたが、サクラが最高の材料であった。5年ほど前に産経新聞の産経抄で当時
は発見された奥の細道の版木がサクラであった事を知った。また、宇治黄檗山万福寺の大量の版木は桜で、その中でも吉野山の桜は一番と寺僧はいう。
他に家具、彫刻、楽器にも使用する。1431
- 学名
- Prunus jamasakura(やまざくら)
- 科
- バラ科
- 属
- サクラ属
- 英名
- Japanese Cherry
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