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新・木偏百樹

こぶし

辛夷・拳、ムラサキコブシ、ヤマアララギ、コブシハジカミ、タネマキザクラ
コブシは日本の特産で学名にもコブスと記載されている。 北海道、本州、四国、九州の山地にだけで目にされたものが、今は公園とか枚庭でも多く見られ庭木としてもよく植えられている。コブシの和名の語源は拳 で、つぼみの形が似ているというのと、秋に成熟した果実の形が、幼児の拳のように見えることからという二説がある。
コブシが咲き出すと春の始まり、ある日突然咲いて1週間ほどで散ってしまう。この花の開花は各地で農作業の目安になったり、豊凶を占うことに利用され てきた。
「コブシの花の多い年は豊作」は各地で似たような言葉になつている。「コブシの花が咲いたら田内をせよ(青森・秋田)」「コブシの花が咲いたら、麻まけ( 長野県)」、「コブシの花が咲くとイワシがとれる(佐渡)」、「コブシの花が咲くと、サツマイモを植える(鹿児島)など。
よく似た花に、同じモクレン科のタムシバがあり、白い花びらも同じく六枚だが、花の根もとにコブシは一枚の葉がついているのに、タムシバでは葉がないの で区別できる。
こぶしの、蕾がふくらむ開花前、申し合わせたように北を向いているので、磁石の木ともいわれる。これは太陽の当たる南側の部分の成長が早いのに比べ て北側が成長しにくいので、結果的に太陽と反対の方向、つまり北を向くからだろう。
宮沢賢治の童話には、樹木がよく登場する。「アグノリアの木は寂静印(じゃくじょう)です」は『マグノリアの木』のなかにでてくるが、これはコブシのことをさしている。『なめとこ山の熊』では熊の親子の会話で「ひきざくら」がでて くるが、これもコブシのことである。
コブシの大木が満開になると、遠目には雪が積ったようで、木全体が真っ白におおわれる。攻めてくる敵兵の白旗に見間違ったための悲劇もある。昔、壇 の浦で破れた平家の落武者が、熊本の山奥に逃げ隠れたが、早春のある日、突然まわりの山々が源氏の白旗が迫り、囲まれていると思い、全員自刃した 。白旗に見えたのはコブシの花であった。その話のようにコブシの花は清純と凛とした美しさの中にもさびしさを感じさせる花でもある。
材は灰白色から帯黄灰色でホオノキに似ているが、ホオノキに比べ少し硬く刃切れは少し悪い。小物の器具材、玩具、漆器素地、薪炭材に使用する。皮付 丸太はその雅致をいかして茶室の床柱、軒のタル木等に使はれ、木炭も金銀銅等の研磨用に使われる。
コブシは他のモクレン科の台木に使われるくらい樹勢が強く、日当たりさえよければそれほど手入れしなくても、毎年美しい花を咲かせる。また20mくらい にも育つので、庭では大きくなりすぎるので、適当に剪定した方がよい。日本の文学書では、辛夷という字をコブシに当てているが、中国で辛夷といっている のは、モクレン科のモクレンのことで、本当は誤りである。
山梨県韮崎市、横浜市神奈川区、岩手県花巻市などで市の木に、福井県 大野市、立川市、練馬区、埼玉県新座市などで市の花に指定されている。1306
学名
Magnolia kobus
モクレン科
モクレン属
英名
Thunber's Magrrolia

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