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新・木偏百樹

くすのき

楠、樟、豫樟(ヨショウ)、 関東地方南部より九州まで分布。
台湾、揚子江以南の中国に生育する。
宮崎、鹿児島、熊本に蓄積が多い。
シイ・カシ類とともに、日本の暖帯林を構成する主要樹種。
生長が早くて虫害に強く、丈夫で寿命が長いため、聖なる木として、昔から神社、寺院などの境内に、現在は街路樹としてよく植えられている。
防風林、庭木、記念樹などとしても栽植される。
国や県の天然記念物などの巨木のなかでは、くすが最も多く、多くは支柱なしで自立している。
植栽のものは通直であるが、天然のものは枝分れ多く樹形は複雑。
そのため、巨樹めぐりに欠かせない迫力のある木。
日本書記に素盞鳴尊が髪の毛を抜いて植えたのが樟で舟の材料にせよと言ったと記されている。
古代の遺跡から出土した丸木船はくすやタブを用いている。
新緑の候になると、少し赤みをおびた新芽が美しい。
5月頃に注意しないと気がつかないほどの黄白色の小花をつける。
昔から各地で名前がわからないということでナンジャモンジャといわれているものにはくすが多い。
一般には楠と書かれるが、「楠」は中国四川省に自生するタブノキで、日本には自生していない。
日本のくすには「樟」の字を当てるのが正しいとされている。
クスの語源は諸説あるが、『和訓栞』にくすは奇の木の意という解釈があり、石に化けて樟脳になることからきたという説がある。
興味深いのは台湾の高砂族は「ラクス」と呼んいて、早口で言うと「クス」と聞こえるので南方語の由来説もある。
日本に仏教が伝来した頃は、くすで仏像を造ることが多かった。
印度や中国では主に白檀を使用していたが、日本には白檀がないので、香木を兼ね彫刻しやすくいということでクススノキを利用したと考えられる。
ヒノキが彫刻に適した材であることがわかるまで続いた。
クスの枝は風に弱く、折れやすい、台風の時期に葉を多くつけた枝を落とす性質は台風に対する防衛機能ではないだろうか。
また くすの葉の縁は堅く、風による葉のこすれあう音は、音の干渉によって街の騒音を打ち消す効果が高く、学校や病院など静かな環境が必要な場所の植栽 に効果的とされている。
葉を浴湯料として用いると、血行がよくなり、、疲労回復、リウマチ、神経痛、肩こり、腰痛に効果がある。
徳川網吉の時代にくすから樟脳を採る方法が薩摩藩に伝わって、外貨獲得のための貴重品となった。
以後第2次大戦前までは日本の輸出品のうちでも重量なものだった。
樟脳は防虫剤に使用したほか、セルロイド、写真フィルム、香料、諸々の薬品(強心興奮剤など)に利用されていた。
今では、上質の合成樟脳がつくられるので、天然樟脳はなくなりタンスを開けると化学合成した防虫剤に変わってしまった。
くすは、大樹が多いので、大きい板面が得やすい。
乾燥は、やや狂いが生じやすいが、容易とされている。
材質は、やや軽軟なものから中庸程度のものまであって、生育の条件によって変化する幅が広い。
材は精油分を含んでいるため水湿によく耐え、その耐朽性・耐虫性などの保存性がきわめて高い。
軽い木材で、とくに強いとはいえない。
国産の木材のなかでは珍しく木理が交錨していることが多い、そのため逆目(さかめ)をおこしやすいが、しばしば玉杢や美しい紋理を生ずる。
昔から社寺建築の構築材に用いられてきた。
また和風建築の内装材としても用途が広い。
床柱、床板、天井板、棚板、板戸の鏡板、箱、彫刻、旋作のようなものがあり、欄間がよく知られ、富山県の井波がその産地として有名である。
またその性質から、古くから船材、水車材としても名高い。
木魚ではくす製のものはまろやかにこもった音を発するので最上とされている。
九州新幹線は従来の客車のイメージとは異なる、ウッディな雰囲気に仕上がっている。
仕切りにクスが使われている。
学名
Cinnamonum camphora 
くすのき科
クスノキ属
英名
Camphor Tree

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