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新・木偏百樹

えのき

古名は榎(エ)。
高さ25mにもなる。
本州、四国、九州、朝鮮半島、中国中部、インドシナ、タイに分布する。
稜木(ソバノキ)、榎椋(エムク)、榎実木(ヨノミノキ)、ヨノキ、ヨノミ、エノミ、ユノキの言い方があり、柳田国男は「ヨノキ」は(嘉樹)めでたい木、前川文夫は神が降臨する「タタエノキ」がタタが除かれて「エノキ」になったと考えた。
「ユノキ」は「斎木」、神聖な木を意味すると各地で神と関係づけられ、お正月の餅花を榎につける所もある。このほかにもエノキの名前の由来が数多い。
木偏に夏と書いて「榎」と読ますのも、その大木の緑陰が夏の憩の場であったからであろう。日本だけに通用する漢字で、中国では別の植物である。
昔は榎を街道の一里塚に植えた所が多く、老木の残っている所がある。今でも日光街道、中山道をはじめ、旧街道のほとりに昔の面影を残している。
ヤドリギがよく寄生し、落葉中にその緑は目立ち、神が宿る木と見られた。
1712年大坂の医者寺島良安が、中国の百科辞典「三才図会」にならって著した図入りの辞典の和漢三才図会には「エノキの実はムクドリとヒョドリの大好物 であるばかりか、甘味があるので、子供達も好んで食べる」という意味の記述がある。
材は薪炭、洋家具、馬鞍、土木用柄、滑車等に使い、板はケヤキに良く似ている。木肌は白から淡黄褐色、赤味がないので心材と辺材の境がはつきりしな い。切断性にすぐれ、盆や、器にした場合の重さはちょうどよい。
木質は楡よりも硬く、キズがきにくいが、青カビが入り易い。普通は丸太の辺材部に入るのだがエノキは芯から先に入る。
このような性質のため、伐採直後に加工するか、完全に人工乾燥してから乾燥するかしかない。
クラフトマンにはやっかいな木。
エノキの葉は国蝶のオオムラサキの幼虫の大好物。他にもテングチョウやヒオドシチョウも食草にする。
ことわざでは「榎の実はならばなれ、木は椋の木」、「椋の木の下にて榎の実を拾う」、「椋はなっても木は榎」などがあるが、榎と椋が良く似ていることから きたもので、榎の実がなろうが何がなろうが、椋の木と一度言い出したら、その主張は何がなんでも変えないという意で、強情を張って、人のことばを聞き入 れないことをいう。
エノキにはさまざまないわれや怪異伝承が多い。
まったく反対の意味のことも多くあり、研究材料としてはおもしろい木だ。
学名
Celtis sinensis
ニレ科
エノキ属
英名
Japanese Hackberry

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