現代の日本で一番に名が知れ渡っているのはスギでしょう。日本全国に植林された森がありますし、そのため毎年春にはスギ花粉で悩む人もいます。またサクラが鑑賞用の樹木とすると、スギは産業用の樹木といえるでしょうか。
スギの名前を小説に入れた作家は52名います。また1つ以上スギの名前を使った小説としては130ありました。
すべての小説での出現回数は687箇所ありました。
スギが一番出現する小説は川端康成の古都ですが、京都の北山スギのことについて、多く記述しているためです。
最も出現回数の多い作家は先に述べた川端康成で97箇所、 次は幸田文で82箇所です。幸田の「木」は樹木についての話ですが、その本の中でスギについての記述が一番多いです。
以下、宮沢賢治の67箇所、水上勉の38箇所、島崎藤村の33箇所、夏目漱石の29箇所、高田宏の20箇所、有島武郎の19箇所、山本周五郎の19箇所、梶井基次郎の18箇所、北杜夫の11箇所、井伏鱒二の10箇所でした。(以下省略)
また小説別では、川端康成の「古都」97箇所、幸田文の「木」82箇所、宮沢賢治の「虔十公園林」828箇所、島崎藤村の「夜明け前」828箇所、高田宏の「木に会う」820箇所、有島武郎の「或る女」819箇所、水上勉の「櫻守」813箇所、水上勉の「凩(こがらし)」812箇所、川端康成の「眠れる美女」811箇所、北杜夫の「楡家の人びと」811箇所でした。(以下省略)
以下に面白い、素敵、綺麗な表現のあるものをピックアップします。
スギに関する情報と写真はコチラ
- 夏目漱石の「こころ」
- ことに霜に打たれて蒼味を失った杉の木立の茶褐色が、薄黒い空の中に、梢を並べて聳ているのを振り返って見た時は、寒さが背中へ噛(かじり)付いたような心持がしました。(286頁)
- 島崎藤村の「若菜集」
- 檜は荒し杉直し 五葉は黒し椎の木の 枝をまじゆる白樫や(201頁)
- 島崎藤村の「夜明け前」
- 古風な杉の葉の束の丸く大きく造ったのが薄暗い軒先につるしてあるのも眼につく。清酒ありのしるしである。(197頁)
- 有島武郎の「或る女」
- 風はまた一しきりうなりを立てて杉叢をこそいで通りぬけた。(296頁)
- 漆よりも色濃くむらむらと立ち騒いでいるのは古い杉の木立ちだった。(296頁)
- 山内一面の杉森からは深山のような鬼気(きき)がしんしんと吐き出されるように思えた。(302頁)
- 杉森がごうごうと鳴りを立てて、枯れ葉が明るい障子に飛鳥のような影を見せながら、(316頁)
- 戸板の杉の赤みが鰹節の心のように半透明にまっ赤かに光っているので、369頁)
- その先には赤く霜枯れた杉森がゆるやかに暮れ初(そ)めて、光を含んだ青空が静かに流れるように漂っていた。苔(402頁)
- 長塚節の「土」
- 隣の森の杉がぞっくりと冴た空へ突つ込んで居る。(11頁)
- その度に杉は針葉樹の特色を現して樹脂多い葉がばりばり凄じく鳴て燒けた。(316頁)
- 岡本かの子の「東海道五十三次」
- 作楽井が言ったように杉の葉を玉に丸めてその下に旗を下げた看板を軒先に出している家がある。((93頁)
- 川端康成の「古都」
- 皮をむき、洗いみがきあげた、杉丸太(224頁)
- 川端康成の「雪国」
- 山裾の川は杉の梢から流れ出るように見えた。(86頁)
- 幸田文の「木」
- ここでは雨は杉へのお届けものなのだ、とのみこめた。(64頁)
- 縄紋杉は目からも心からもはみ出していて、始末がつかなかった。(71頁)