小説の中のにでてくる木で最も多いのは、サクラ(桜・櫻) です。
58人の作者が取り上げていて、小説タイトルは132ありました。
出現回数は1680箇所ありました。
最も出現回数の多い作家は水上勉で579箇所、これは「櫻守」 のためです。
次は渡辺淳一で257箇所、これは「桜の樹の下で」 のためです。
三位は宇野千代の138箇所、「淡墨の桜」 のためです。
ここまではサクラをテーマにした小説なので、当然多くなりますね。
4位からは川端康成の74箇所、谷崎潤一郎の31箇所、島崎藤村の30箇所、夏目漱石の28箇所、幸田文の21箇所、林芙美子の21箇所、阿川弘之の20箇所、芥川竜之介の20箇所、と続きます。
また小説別では川端康成の「古都」 33箇所、川端康成山の音」 30箇所、幸田文の「木」 「21箇所、阿川弘之の「雲の墓標」 20箇所、林芙美子の「放浪記」 20箇所、 谷崎潤一郎の「細雪」 16箇所、水上勉の「凩(こがらし)」 12箇所、高田宏の「木に会う」 11箇所、鷺沢萌の「葉桜の日」 11箇所、川端康成の「みずうみ」 11箇所、夏目漱石の「草枕」 10箇所、三浦綾子の「塩狩峠」 10箇所、辻井喬の「父の肖像」 10箇所、島崎藤村の「千曲川のスケッチ」 10箇所、有島武郎の「或る女」 10箇所でした。
宇野千代の「淡墨の桜」は岐阜県本巣市の根尾谷・淡墨公園を見て、大きな影響をうけ小説にしたことで有名です。保護活動もおこない、県知事まで動かしたことも事実です。小説「淡墨の桜」の20ページに『「淡墨の桜」に万朶の花を咲かせたい』とあるのが、作者も気持ちを代表した文章と思います。
以下に面白い、素敵、綺麗な表現のあるものをピックアップします。
サクラに関する情報と写真はコチラ
- 夏目漱石の草枕
- 自然と凹む二畳ばかりの岩のなかに春の水がいつともなく、たまって静かに山桜の影を蘸(ひた)している。(45ページ )
- 落ち付いて影を蘸(ひた)していた山桜が、水と共に、延びたり縮んだり、曲がったり、くねったりする。(114ページ )
- 島崎藤村の破戒
- 日の光は秋風に送られて、かれがれな桜の霜葉をうつくしくして見せる。蕭条(しょうじょう)とした草木の凋落は一層先輩の薄命を冥想させる種となつた。(90ページ )
- 有島武郎の或る女
- 半分がた散り尽くした桜の葉は真紅に紅葉して、軒並みに掲げられた日章旗が、風のない空気の中にあざやかにならんでいた。(242ページ )
- 庭先きの一重桜の梢には南に向いたほうに白い花べんがどこからか飛んで来てくっついたようにちらほら見え出していた、(402ページ)
- 与謝野晶子のみだれ髪
- 清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき(13ページ))
- 夢野久作のあやかしの鼓
- 麻布笄町の神道本局の桜が曇った空の下にチラリと白くなっていた。(364ページ)
- 夢野久作のいなか、の、じけん
- ちょうど桜がチラチラし初めて、麦畑を雲雀がチョロチョロして、トテモいい日曜の朝のこと。(231ページ )
- 倉田百三の出家とその弟子
- (縁さきに出る。重たそうに咲き満ちた桜の花を見る)ようさいたなあ。(227ページ )
- 佐藤春夫の田園の憂鬱
- 松は松として生き、桜は桜として、槇は槇として生きた。(29ページ)
- 宮沢賢治のうろこ雲
- 桜の梢は立派な寄木を遠い南の空に組み上げ私はたばこよりも寂しく煙る地平線にかすかな泪をながす。(311ページ )
- 川端康成の山の音
- 泉水にうつる桜に誘われて(125ページ)
- 梶井基次郎の桜の樹の下には
- 桜の根は貪婪(どんらん)な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚(あつ)めて、その液体を吸っている。(189ページ )
- 有吉佐和子の紀ノ川
- 桜並木が仄(ほのか)に白かった(219ページ)