森林認証・温暖化・熱帯林問題への対応
小林紀之 著 定価2500円
A5判 318頁
2000年9月 発行 ISBN4-88965-121-7
国に頼らず、自分たちで地球環境を守るという、新たな考え、 パラダイムシフトを表した、現代に出るべくして出た本。 環境配慮と経済発展の相矛盾するものを、企業はどのようにするのか、 何をしなければならないのか。今一番の話題の森林認証制度や地球温暖化 への対応、そして熱帯林再生への挑戦をテーマに、最近の資料と情勢を 分析、これからの時代の進路を提示している。
目次
プロローグ 21世紀の企業に問われていること 新たなパラダイムが求められている 環境に配慮しない企業は生き残れない 環境ガバナンスとは 環境倫理を踏まえた企業活動を 環境保全のコストを誰が負担するのか 環境と経済を両立させる持続可能な森林経営 21世紀の企業のあり方を考える―本書の狙い 第1章 持続可能な森林経営と森林認証・木材ラベリング制度 1 国際的な動向 なぜ森林認証・ラベリング制度が注目されているのか 持続可能な森林経営とは 国連持続可能な開発委員会での検討 さまざまな基準・指標づくりが進む 民間ベースではISOとFSCが二大潮流 2 ISOの動向 ISOとは――その目的、機構 環境マネジメントシステム規格「ISO14000シリーズ」 ISO14001とは PDCAサイクルの内容 各種の環境ラベル規格も発効した 森林分野でもISO14001が普及し始めている 北米での認証取得状況 北欧三国でも認証森林が広がる 日本でも認証取得、世界で二五〇〇万haに 3 FSCの動向 FSCとは――その目的、機構 FSC認証の内容と費用 FSCの原則・規準(P&C) FSC森林認証の取得状況 認証取得件数の最も多い米国の状況 小規模森林所有者向けの二つの認証制度 途上国でも十三か国に認証森林が広がる 認証機関による認証方法の違い CoC認証とバイヤーズグループ わが国産業界とISO14001 第2章 ISO14001の森林分野への適用 1 技術報告書(ISO TR14061)ができるまで スタディグループが技術報告書の作成求める 森林分野作業部会(WG2)の設置とその目的 三十か国からエキスパートが参加して論議 反対なしで技術報告書を採択 国内ではタスクグループで検討 短期間で合意形成ができた要因――民間主導の利点 消費者のニーズが林産業界を動かした NGOの果たした役割 主要林産企業の積極的参加 南北対立もなかった 2 技術報告書(ISO TR14061)の内容 適用範囲を厳しく制限、情報提供が目的 技術報告書の構成――核心は第五章 適用範囲――組織外の関係者との連携が必要 環境方針――基準・指標の考え方を組み込む 計画――「著しい環境側面」などに配慮 監視及び測定――達成状況をチェックする指標を例示 小規模森林所有及び事業への適用について 自己宣言、第三者による監査、第三者による認証 技術報告書の問題点と課題――自主判断の難しさ ライフサイクルアセスメントにどう取り組むか 情報公開、住民参加をどう実行するか 生物多様性、 水質保全にどう取り組んでいくか 3 住友林業㈱山林部のISO14001認証取得 住友林業㈱の森林経営――報国土の精神と自然環境への配慮 ISO14001の認証取得を目指した理由 準備作業で留意したこと 検討を開始して二年後の一九九九年七月に認証取得 環境マネジメントシステムの適用範囲 環境影響評価はどのように行っているか 管理・責任体制と文書化の実際 十四名の内部監査員が点検・是正処置で活躍 現場ではどのような取り組みが進んでいるか 住友林業㈱住宅部門のISO14001認証取得 第3章 森林認証・木材ラベリング制度の普及可能性 1 消費者のニーズ 欧州の消費者は「環境」をどれだけ重視しているか カナダBC州での認証木材購買調査 市場ニーズ=消費者の環境意識が普及の鍵 フィンランドと英国の森林所有者はどう見ているか 米国のFSC認証森林所有者が期待していること 環境保護団体からの圧力軽減も大きな狙い バイヤーズグループの現状と課題 2 認証取得者のニーズ 企業・組織を動かす三つの要因 森林の所有形態・目的により異なる動機 今後の期待は認証製品の市場優位性 認証取得に止まらず社会的信頼の再構築を 3 日本における普及可能性 環境対応の動機が外圧から国内ニーズへシフト グリーン調達に対応できないと取引対象外に 住宅メーカーを中心とした企業間連鎖の拡大に注目 高まる住宅購入者の環境意識 4 ISO14001とFSCの普及可能性 ISOとFSCの主な違い 環境保護色の強いFSC――そのプラスとマイナス 市場競争の激しい国ではIS0の普及可能性が高い 消費者と企業、双方のニーズへの対応がポイント 第4章 地球温暖化と森林―海外植林の可能性と課題― 1 地球温暖化と森林の関係 温暖化の最大要因はCO2濃度の上昇 温暖化がもたらすリスク 森林にも大きな影響が出る 陸上生態系はどれだけのCO2を吸収しているのか 森林は重要な炭素の貯蔵庫 2 京都議定書の成果と課題―「吸収源」としての森林― COP3と京都議定書 京都議定書の問題点――途上国の不参加 五%ハードルは妥当な目標値か 森林を吸収源に加えることの問題 追加的人為活動をどこまで認めるのか CO2吸収量の算出法、 木材製品中の炭素評価も課題 懸念される「ホットエアー」の存在 わが国は「地球温暖化対策推進大綱」を策定 林野庁の温暖化検討会報告 木材のカスード型利用とリサイクル バイオマスエネルギーの実用化を 循環型システム構築へ三つの方策 経団連の自主行動計画と環境(炭素)税の検討 3 京都メカニズムと海外植林 京都メカニズムとは 運営主体となる認証機関が必要 ISOも特別検討グループを設置 CO2排出権はいくらで取引されるのか <「植林」と「造林」の定義をどう考えるか?> 住友林業(株)によるCDMケーススタディ 炭素固定量、ベースラインの試算値 植林事業ではリーケージ対策が重要 CO2吸収量の算出手法開発などが今後の課題 CO2取引は海外植林事業にインセンティブを与えるか 持続可能な森林経営を第一義に 政府ベースだけでなく広範な論議を わが国企業の海外植林―現状と展望― 第5章 熱帯林再生への挑戦―住友林業(株)の熱帯林再生プロジェクト― 1 失われつつある熱帯林―その現状と要因― なぜ熱帯林の減少・劣化が止まらないのか 年平均一三○〇万haの熱帯林が失われている 保護・保全林は名ばかりのケースが多い インドネシアの山火事の原因は何か OECDとIPFが分析した熱帯林減少の要因 適正水準の伐採で熱帯林の回復力維持を 商業伐採面積は年平均五九○万ha 2 熱帯林再生プロジェクトの概要 プロジェクトに取り組んだ五つの理由 なぜスブルに実験林を設置したのか 山火事、焼き畑と開発圧力にさらされる中で 実験林の植生、気候、地形、土壌条件など 在来種を植栽して本来の生態系に戻す 公益性・国際性とトップレベルの学術研究を目指す 3 フタバガキ科(ラワン類)樹木の植林技術開発 フタバガキ科とお釈迦さん フタバガキ科樹木にはわからないことが多かった スブル実験林での植栽実験と成果のあらまし 四つの植栽方法による成長比較 六種の造林適性を調べる 焼き畑跡地でもフタバガキ科樹木の生育に成功 実生苗の自家生産で造林コストを削減できる 通常の土壌乾燥ならば苗木は枯死しない 外生菌根菌の効率的な接種法を開発 フタバガキ科の挿し木技術開発、組織培養にも成功 スブル実験林の成果と今後の課題 4 スブル実験林での社会林業 社会林業からの収入は焼き畑収入を上回り得るか 社会林業が定着するまでの経緯 焼き畑と社会林業の収支を比較する 通年労働と安定的な収入を確保するために 5 混乱期を迎えて―新たな試練と挑戦― インドネシア側にとってのメリット 日本側にとってのメリット ソロスとエルニーニョがインドネシアを襲った 天災と人災ががからんだ山火事被害 IMF勧告により森林政策を改革 混乱が続くインドネシアの森林政策 スブル実験林にも火の手が及ぶ 実験林全域で大きな被害 <山火事と飢えるオラウータン> 新たに土地問題が勃発 地元住民が補償金と土地所有権を要求 住民との対話を優先、補償金は払わず 二〇六人の住民の意向を調査 森林は誰のものか エピローグ 「民力」による新たなパラダイムを拓くために ISO14001が「民力」具体化のシステムになる 自主的規制を支援する法的規制も必要 情報公開を進め、 社会的責任をチェックする 「負の遺産」の時代を繰り返さないために 温暖化対策も視野に入れた海外植林の展開を 資料 持続可能な森林経営のための政府間基準の概要