『法隆寺を支えた木』
西岡常一、小原二郎共著
NHKブックス /700(S63現在)
この本は、昭和最後の宮大工と言われた西岡氏と、農学博士の小原氏が
別々に書いたものを一冊にまとめあげた本です。小原氏は「西岡氏の話に、
私が解説を付け加えたもの」だと述べています。同じ「木」という共通の
テーマのもとに、西岡氏はご自身が宮大工となるべく育てられ、法隆寺や
薬師寺等の復興に関わってきた中で学んださまざまな事柄について語りま
す。一方での、小原氏は西岡氏の話の中から特に木についての部分をまと
めた上で、科学的な説明を加えています。
この本の中で、何度も強調されて語られることは、ヒノキという木材の
素晴らしさです。西岡氏によれば、「法隆寺の建物は、ほとんどヒノキ材
で、主要なところは、すべて樹齢一千年以上のヒノキが使われています。
そのヒノキが、もう千三百年を生きてビクともしません。」ということで
す。このことを初めて知ったとき、私は非常に驚きました。そして、「大
切にすれば千年二千年ももつ木のいのちを、なぜ(いまの時代は)百年は
おろか、二~三十年で絶つような使い方をするのか」という、西岡氏の叫
びが、深く印象に残りました。
その他にも、木についていろいろと参考になる部分の多い一冊だと思い
ます。 (鈴木晶子 )
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