グイマツ
解説
マツ科カラマツ属の落葉高木。学名
:Larix gmelinii、英名:Dahurian larch、 Gmelin larch、Kurile larch 別名:ロシアカラマツ、シベリアカラマツ、ダウリアカラマツ、ダフリカカラマツ、北洋唐松、色丹松(シコタンマツ),ソ連唐松、チシマカラマツ,カラフトマツ,カラフトカラマツなど。
樺太、南千島、カムチャッカ、シベリア、大興安嶺(中国)などに分布するカラマツの一種。
かっては北海道から東北北部まで分布していましたが、地球の環境変化により約8千年前には北海道のものは絶滅したとされています。現在の北海道内で植栽されているグイマツは,昔の日本領土の樺太、南千島列島,サハリンから導入されたものと思われます。これらを狭義のグイマツとすることもあります。この場合の学名は
Larix gmelinii var. japonica(
Larix gmeliniiに
var. がついていて変種ということがわかる) 木材業界ではグイマツはロシアから輸入されるダフリカカラマツのことを言います。
日当たりの良い湿潤なところを好み、樹高は20メートル、大きいものでは30メートル、直径80センチになるものもあります。北極に近いほど背が低くなります。
グイマツの樹皮は暗灰色や暗赤褐色から黒褐色で,分厚くなり、古くなると鱗状に割れはがれ落ちます。針形の葉の裏面には2個の白い気孔帯があります。葉は秋に黄葉します。この時期を旅客機から見ると金色~茶色の樹々(葉) が光に反射する森の姿は雪との対比で大変美しいものです。
この木は最も北に位置する樹種になり、極寒の地域などは競合の樹種はなくなります。そしてクイマツにとっての最適の生育場所ではトウヒ、マツ、カバノキなどとの混成する地帯になります。
日本では木材資源として多く輸入されてきましたが、これらの原木の生産地は、ハバロフスク州を中心に、アムール州を経てイルクーツク州までの地区で永久凍土地も含まれています。
無尽蔵にあるように業界では言われてきて、いまだに未開拓の森林が残っている地域とされている地域もあります。そのため「レッドデータブック」では「低リスク(LR/LC)」と評価されており、絶滅危惧リスクは無いとされていました。しかし、伐採は南洋のラワン材のように間引くのではなく、皆伐なので、その後の生育に年数がかかりすぎる、まして永久凍土地の場合はより厳しい条件になります。いずれレッドデータブックのリスクも変えられると思います。
日本とロシア産のものとの比較では、ロシア産のものはすべて原生林からのもので、気候も極寒のため、成長が遅いのでしょう年輪は詰まっています。
木材の性質は気乾比重0.57~0.63。
人工造林の日本のカラマツ(0.46-0.5 )より比重は高く、重硬です。強度も優れていて日本の針葉樹の中で最高クラスです。
心材はカラマツよりも赤みの少ない黄褐色〜紅色を帯びた黄褐色。辺材は淡黄白色です。ロシア産と日本産では原生林と人工林、極寒地帯と寒帯との異なる環境と生育から木の断面に両者の違いがでています。年輪ははっきりしています。
日本のカラマツにくらべて木材の欠点でるヤニや入皮などが多いです。木理は通直、肌目は粗く加工は少し困難です。乾燥は容易ですが狂いが出やすいため注意が必要。耐朽性は中程度で、樹脂分が多いため,耐水性に優れています。
宗教団体である
阿含宗の総本殿で行われる星まつりには長い間このロシア産カラマツを利用していました。世界最大の焚火と言われるくらいのもので迫力がありました。2015年以降は長くて太い優良な丸太が輸入できなくなり、国産杉に変わっています。
一般の用途としても、木材性質を活かしたものが多いです。水中,土中で耐久性があり、圧縮強度,曲げ強度が特に優れるので土木用の仮設材として利用されています。建築の土台、杭、橋梁、枕木、電柱、船舶などの造作的でないものです。パルプ材、合板用にも利用されます。最近では高強度向け構造用集成材の外層ラミナとしての利用法も期待されています。またエクステリア材としてもウッドデッキやウッドフェンスにも一部使われています。南洋材のハードウッドにはかないませんが、通気性を確保すれば長期間の使用も可能です。
また、国産のものは樹形が良いので,公園樹,街路樹に利用されます。
かってアイヌ(樺太)先住民族では実を食用、枝で弓矢やソリを、木材では偶像を彫っていました。
実
▲▲ 北海道大学植物園 2014年9月14日
樹形
▲▲ 北海道大学植物園 2014年9月14日
幹
葉
北海道大学植物園 2014年9月14日