イヌガヤ
解説
イチイ科イヌガヤ属の常緑高木 学名:Cephalotaxus harringtonia 別名はヘビノキ(蛇の木)、ヘダマ(屁玉)、ヒノキダマ(檜玉)、ヘボガヤ(へぼ榧)などと呼ばれています。和名はイヌ+カヤとなっていてイヌ付いているのはカヤより落ちる、有用でない、よくないいう意味を含んでいる。樹形が貧祖なのか、実が食べるのには適さないのか、一面的な面からとらえた呼び名です。
朝鮮半島、中国大陸中北部に分布、日本では、岩手県南部の太平洋岸から九州に至る暖温帯に生育。垂直分布は10~1400メートルと幅が広い。
雌雄異株。通常樹高は6~15メートル。直径は20~30センチ。
葉はカヤに似て線形で二列にならんでいます。果実は褐紫色の肉質多奨の外栗皮を持ったものですが、有害ではないけれど、これは苦くて、食べるのには無理があります。
葉とか枝に、ピネンとかカジネンといった香気成分があります。種子をつぶすとその匂いは特に強烈です。これはのちに述べる油分があるためです。花期は3月〜4月。
樹皮は暗褐色。辺材、心材ともに淡黄褐色で境界はわかりにくいです。木理には波状杢ができます。肌目は精。比重0.56程度。材は緻密で硬く、粘りがあって耐久性にも優れる。古代には弓をこれで作ったといいます。
種子から採れる油は、特殊な性質があり、気温が下がつても凍らない特徴があり、雪国の人々が灯火用油として重宝しました。「延喜式」にも「閉美油」の名でイヌガヤの油についての記述があります。つい近年まで奈良吉野の村で燈火に使用していたといいます。寒い中でも凍ることなく明るい光を放つため、冬の神事には欠かせない燈油であったのでしょう。明治の後半には石油系の良質な燈油が流通していたにもかかわらず、灯台船用の油はイヌガヤ油を使用していたのは、イヌガヤ油の性能が勝っていた証拠です。
用途は 建築の造作用、器具材、家具材、土木用材などです。その他にはイヌガヤの葉から発見されたエキスは白血病関係の抗がん剤として成分利用されています。
葉と表皮
大阪市大植物園2000年4月9日
葉
オーストリア ウィーン大学植物園 2015年9月25日
樹形
オーストリア ウィーン大学植物園 2015年9月25日