一般にゴムの木と呼ばれているようにゴムの原料として知られる熱帯樹木です。トウダイグサ科パラゴムノキ属の常緑高木。 学名:Hevea brasiliensis
「パラ」は原産地であるブラジルのパラ州に由来するとありますが、はっきりとわかりません。
パラ(Estado do Pará)は、ブラジル北部に位置する州であり、アマゾン川流域に広がる広大な領域を含んでいます。パラ州は、かつてゴムブームの時期において世界的に重要なゴム生産地となりました。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、パラ州ではパラゴムノキの栽培とゴムの収穫が盛んに行われました。この時期、パラ州は世界最大のゴム生産地の一つとなり、ブラジルにおけるゴムの主要な供給源でした。
この州ではゴムの採取やゴムプランテーションに従事する人々が多く存在し、ゴム産業が地域経済に大きな影響を与えました。そのため、パラ州はゴムの産地としての歴史的な関連性を持ち、"パラ"という言葉がゴムに関連する文脈で使用されることもあります。ただし、パラ州自体とパラゴムノキの間には直接的な関係はありません。パラゴムノキはブラジル全土や東南アジアなど他の地域でも栽培されていますが、その名前にはブラジル原産であることを示す意味が含まれています。
英語: Rubber tree, Para rubber tree、スペイン語: Árbol de caucho, Hevea, Seringueira、フランス語: Hévéa, Arbre à caoutchouc、ポルトガル語: Seringueira, Hevea, Árvore da borracha、ドイツ語: Kautschukbaum, Gummibaum、中国語: 橡胶树 (Xiàngjiāoshù)、
子孫の増やし方は少し変わっていて、雨季には増水した川に水没する浸水林に生育するので種子は水に浮き、雨季に増水した水の流れに乗って分散します。
樹高は30m以上に達することもあります。葉は3枚の小葉からなる複葉。
パラゴムノキの主な利用目的は、ゴムの生産です。パラゴムノキの樹液である乳液からゴムが抽出されます。樹液は樹皮を削ることによって得られ、乳白色で粘性があります。この樹液はゴム粒と呼ばれる微小な粒子で構成されており、加硫などの処理を経てゴム製品に加工されます。
乳液は、パラゴムノキの幹に存在する乳液管から取得されます。乳液管は幹の樹皮と篩部の間にあり、地面から30度の角度で右巻きの螺旋状に上昇しています。幹に切り込みを入れることで乳液が流れ出し、容器に集められます。乳液の収集は、樹齢が5〜6年(以前は7〜10年)になると行われます。乳液の量は年齢や成長段階によって異なりますが、最盛期では1日に約30ccの乳液を収集することができます。この乳液に含まれるゴムの含有量は30〜40%であり、1本の木からのゴムの生産量は最盛期には年間約3〜3.5kgになります。
ゴムの需要の高まりに伴い、パラゴムノキは商業的に重要な作物となっています。特にタイ、インドネシア、マレーシアなどの東南アジア諸国では、ゴムの主要な生産地となっています。
パラゴムノキの収穫量が減少した老木は、順次伐採され、新しい若木に植え替えられます。伐採された木材は、乾燥後に集成材として加工されることが一般的です。パラゴムノキの集成材は、木材としての利用に適しており、家具やフローリングなどの材料として利用されています。さらに、パラゴムノキは成長が早いため、木材としての利用技術が確立した近年では、ラテックス採取を目的とせず、最初から木材として利用するために植樹されることも少なくありません。近年日本にも玩具や家具で現地で製造されたものが輸入されています。
持続可能な栽培方法の採用: ゴムプランテーションでは、持続可能な農法や管理方法が導入されています。これには、適切な土壌管理、水資源の効果的な利用、化学薬品の適切な使用などが含まれます。
森林保護と生物多様性の維持: ゴムプランテーションの拡大に伴う森林破壊のリスクを低減するため、森林保護や生物多様性の維持に取り組む取り組みが行われています。例えば、ゴムプランテーションと自然保護区域を組み合わせることで、生態系のつながりを確保したり、野生動物の生息地を保護したりする試みが行われています。
農民の生計向上と社会的責任: ゴム農園の労働者や農民の生計向上を支援するため、フェアトレードや持続可能な栽培の認証制度が導入されています。また、労働条件の改善や地域社会への貢献など、ゴムプランテーションが社会的責任を果たすことも重視されています。
ゴムのリサイクルと代替材料の開発: ゴムのリサイクル技術や代替材料の開発にも注力されています。これにより、使用済みのゴム製品を再利用することで廃棄物の削減や資源の節約を図り、環境負荷を軽減することが期待されています。
これらの取り組みにより、パラゴムノキのゴム生産が持続可能な形で行われるよう努力がされています。環境保護や社会的責任を重視しながら、ゴムの需要を満たすことが目指されています。
パラゴムノキがブラジル原産であるのに東南アジアでゴムが生産されている歴史的な経があります。
19世紀初頭、ゴムの需要が急増し、ゴム製品の需要を満たすためにゴムツリーの栽培が模索されていました。当時、ブラジルのアマゾン地域には豊富なゴムツリーが存在していましたが、ブラジルはゴムの生産方法を厳密に秘密にしていました。そしてブラジル政府はゴムツリーの種子や苗木の輸出を禁止しました。しかし、イギリスの植物学者であるヘンリー・ウィクハム(Henry Wickham)が1880年にゴムツリーの種子をブラジルから持ち出し、イギリスのキューガーデンに持ち帰りました。ウィクハムは密輸とも言われる手段を使い、数千個の種子をイギリスに持ち込んだとされています。
この種子はイギリスで育成され、その後、イギリス領マレー(現在のマレーシア)やその他の東南アジア諸国に広まりました。東南アジアの気候と環境条件がゴムツリーの栽培に適していたため、パラゴムノキはそこで広範に栽培されるようになりました。
このようにして、ウィクハムによるブラジルからの種子の持ち出しとそれに続く栽培の成功により、パラゴムノキはブラジル原産の植物でありながら、東南アジアで主要なゴム生産地となりました。その後、東南アジアにおけるゴムプランテーションの拡大と技術の進歩により、ゴムの需要を満たすための主要な供給源となっています。