レバノン杉 学名:Cedrus libani、マツ科(Pinaceae)ヒマラヤスギ属(Cedrus) の高木の常緑針葉樹です。レバノンを原産地とすることからその名前が付けられました。名前に「杉」がついていますが、これは日本でのみの呼び方です。「スギ」という呼称は、日本語において昔から一般的な針葉樹の呼び方で、特に大きな樹木につけられていることが多いです。米杉(カナダ産、ヒノキ科)やレッドウッド(セコイア属)なども同様です。海外では一般的に Cedar(セダー、シダー)やセドラス・リバ二、リバニーズ・シーダー(Lebanese cedar)などと呼ばれています。地中海地域や中東の山岳地帯で見られます。
高さは30〜40メートルに達することがあります。特徴として、まっすぐな幹と水平に広がる枝があります。若い時は円錐形で成熟するにしたがい水平、傘のように広がる傾向があります。樹皮は灰色がかった茶色で、幹の下部では剥がれやすくなっています。
葉は針葉であり、密に配置されています。葉の色は深緑で、長さは約2.5〜3センチメートルです。
レバノン杉の花は風媒花であり、小さな円錐状の花穂が枝の先端に形成されます。花は通常、春に開花し、風に乗って花粉が他の木に運ばれることで受粉が行われます。
レバノンスギの実は長さ約8~12cmで樽形をしており、2~3年かけて成熟し、種鱗がとれ崩壊して中の種が放出されます。
レバノン杉は、その美しい樹形と堂々とした存在感から、庭園や公園などの景観樹として人気があります。
木材としても価値が高く特徴は、非常に耐久性があり、その堅固さと抵抗力は、さまざまな気候条件や環境に対しても優れています。このため、屋外の建築や構造物の建設に広く使用されてきました。
材は美しい外観を持っています。色合いは淡いピンクから淡い茶色まで変化し、経年変化によって深いオレンジ色に変わることもあります。木目も魅力的で、装飾的な要素や高級な家具に適しています。材には甘い香りがあります。
レバノン杉は、加工しやすく切削や彫刻、研磨などの木工加工に適しており、精密な仕上がりができます。家具や建築材料の製作に広く利用されています。
木材には天然の抗虫性があります。その香りや成分が虫や害虫を寄せ付けず、木材の耐久性を高めます。この特性は、屋外の建築や露天の家具において、虫害のリスクを減らす助けとなります。
さらに音響特性にも優れています。木材が音を反射・吸収する性質があり、音響環境を改善するための素材として使用されます。コンサートホールやスタジオなどの音響空間において重要な役割を果たしています。
しかし、レバノン杉は過去数世紀にわたって乱伐されたため、野生個体の数が減少し、絶滅の危機に瀕しています。現在、保護活動が進められており、再生や植林が行われています。
レバノン杉は、聖書の中で頻繁に登場します。以下にいくつかの例を挙げます。詳しくは「木と聖書」をご覧ください。
・創世記(創世記 22:13):この箇所では、アブラハムが神によって試される出来事が描かれています。アブラハムが息子イサクを犠牲に捧げようとしたとき、神は代わりにレバノン杉の中にいる雄羊を提供しました。
・出エジプト記(出エジプト記 25:10-27):この章では、モーセが神からの指示に基づいて建てるための聖所、すなわち「幕屋」(または「会見の幕屋」とも呼ばれる)の詳細が説明されています。その中には、レバノン杉の木材が使用され、特に幕屋の柱や横木に使われました。
・詩篇(詩篇 29:5):この詩篇では、主の栄光と力が雷のようなものとして描写されます。その中で、レバノン杉は主の声を象徴するものとして登場し、「主の声がレバノンを揺るがす」と述べられています。
・イザヤ書(イザヤ書 37:24):この箇所では、アッシリア王に対して預言者イザヤが語っています。イザヤはアッシリアの傲慢さを指摘し、彼らがレバノンの高い杉の木を切り倒すような傲慢さで他国を征服しようとしていることを暗示しています。