ホウショウ
解説
芳樟
Cinnamomum camphora var. glaucescens クスノキ科
別名「ホーリーフ」と呼ばれるものです。これは、クスノキの変種あるいは亜変種とされています。常緑の高木で、樹高は約25mに達し、幹は直径1mに達することがありますが、普通のクスノキよりは小さいです。しかしながら、どちらの木も似たような外観をしています。芳樟は台湾や中国(広東省、福建省、江西省、湖南省、湖北省、四川省、雲南省、貴州省、浙江省、山東省、安徽省、河南省、江蘇省)に分布しており、亜熱帯地域に生息しています。また、海抜1500m以下の山地や谷間、川沿いなどの湿度の高い場所に生息しています。日本では、1940年に台湾から贈られたクスノキの記念樹の中から発見された芳樟と、1946年に台湾から戦後の引揚者が持ち帰った種子から生えた芳樟があります。それらは鹿児島県、和歌山県、高知県で育てられました。
芳樟の葉は互生し、厚く光沢があり、濃緑色で、細長く、楕円形であることが多いです。芳樟はクスノキに似ていますが、縁が波うっている点が異なります。
芳樟の花は、5月頃に黄白色の小さな花が長い花慣に円錐花序につき、11月頃には紫黒色の実に油蝋を持つ種子ができます。これらの花や実はクスノキより小さいです。芳樟はクスノキと同じく、枝葉、幹、根に匂いがありますが、クスノキとは異なります。それは、香気成分の70%以上がリナロールであるためです。芳樟は「リナロールグス」とも呼ばれています。芳樟には樟脳成分はほとんど含まれていません。
毎年、春先の萌芽前に地際から枝葉を刈り取り、水蒸気蒸留にかけて精油を抽出します。得られた油は重要な香料となっています。この精油はローズウッドの代替品としても使用され、ローズウッドと似た香りがあるため、爽やかなフレッシュグリーンの香りで嗜好性も高く、他の精油との相性も良いため、ブレンド作りにも適しています。
戦後間もなくから鹿児島県で生産され、日本の精油の中でも歴史が古いです。かつてはフランスに香料の原料として輸出されていたこともあります。また、肌荒れを防ぐ効果が高いことから、その芳香蒸留水も利用されています。
葉
長居植物園 2023年4月30日
樹形
長居植物園 2023年4月30日
幹
長居植物園 2023年4月30日