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世界の樹木

イナゴマメ

解説
蝗豆、学名:Ceratonia siliquaL.は、地中海地方原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の常緑高木。
イナゴマメという和名は、英語でその種子を指す "Locust bean" の日本語訳です。地中海沿岸のような温暖な土地でよく育ち、乾燥に耐えるため、世界各地の地中海性気候帯で栽培されています。また、寒さに弱いため、日本では栽培されることはあまりありません。特にキプロス、地中海東部に広く栽培され、中近東の乾燥地帯に特徴的な植物の一つです。
高さが10〜15mで、幅広い半球形の樹形で、粗い茶色の樹皮と頑丈な枝を持つ太い幹に支えられています。葉は、偶数羽状複葉で10〜20cm程度で、互生し、羽状であり、小葉がある場合とない場合があります。雌雄異株のイナゴマメの木のうち、雄の木は厳密には実を結びません。花は秋に咲き、赤く、花弁はなく、総状花序として枝または幹に付きます。豆果は角張って細長く、動物の角あるいはイナゴを思わせる形をしています。莢は長さ15〜20cm、幅2.5〜3.7cmで、熟すると茶色くなり、革のような感触を持ちます。熟した莢は非常に甘く、多量の糖分を含んでいるため、シャーベットやアルコール飲料にも加工されます。牛や豚の重要な飼料として使用されたり、貧しい人々の食料としても利用されます。また、健康食品としても利用され、コレステロール値を下げたり、便秘を解消する効果があるとされています。イスラエル北部では、子供の口内炎の治療にも用いられます。
ポルトガルは、いなごまめの最大の生産国であり、ポルトガルの大西洋岸南部とモロッコ北西部の大西洋沿岸に広がる地中海盆地では、いなごまめの莢は動物の飼料として、また飢饉の時には人の最後の食料としてよく使われました。熟し、乾燥した莢はいなごまめパウダーにされ、代用ココアパウダーとして使用されることもありました。サトウキビが利用される以前は、いなごまめが砂糖の主要な原料でした。
木材はつやがあって、きめが細かく、堅いため、木工細工やステッキなどに使用されます。また、製紙、鉱業、石油工業、水処理、製革などでも利用されています。豆の皮の色素は抽出してブラウンカラーの食品着色に使用されることもあります。
また、地中海沿岸諸国からは「ローカストビーンガム」として、年間1500トン以上輸入されています。このローカストビーンガムは広範囲の加工食品用で、アイスクリーム、パン、ビスケット、菓子、ソーセージ、ハム、チーズ、魚・肉の缶詰、ドレッシング類、マヨネーズソース、ケチャップなどの食品や、製薬工業では錠剤の結合剤やペーストの増粘剤、安定剤、繊維工業では捺染糊などにも使われています。
イスラム教のラマダーン(断食月)の時期には、イナゴマメから作った甘い飲料が飲まれることもあります。
イナゴマメは聖書の中で4か所でてきます。
マタイ 3章 4節  このヨハネは、らくだの毛の着物を着、腰には皮の帯を締め、その食べ物はいなごと野蜜であった。(いなごはイナゴマメのこと)
マルコ 1章 6節 ヨハネは、ラクダの毛で織った物を着て、腰に皮の帯を締め、いなごと野蜜を食べていた。(野蜜は鞘のこと)
申命記32章13節 主はこれを、地の高い所に上らせ、野の産物を食べさせた。主は岩からの蜜と、堅い岩からの油で、(蜜は鞘のこと)
ルカ15章16節 彼は豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいほどであったが、だれひとり彼に与えようとはしなかった。(放蕩息子のたとえ話)
ダイヤの質量を示す単位として使われているカラット(carat、karat)の語源はイナゴマメにあります。当時宝石の重さを表す際「イナゴマメ何粒分の重さか」が基準になっていたため、カラットが単位として使われるようになったとされています。イナゴマメの乾燥種子の重さは約0.2 gほどで均一なためです。
単位で一番知られているのはグラム(g)ですが、宝石の取引では商習慣としてカラットが使われてきたこともあり、日本の計量法では「宝石の質量の計量」にだけ限定的にを認められています。
しかし日本のウィキペディアには投稿者の独自研究ではイナゴマメを個別に電子天秤はかりで計量すると、0.10gから0.25gの間でばらつきがあり均一ではないため、分銅として機能したかどうかは疑わしいと書かれています。
そこでWeb制作者は「聖書の植物」著者の大槻虎男氏の実験で10個の種で0.195gから0.215g(0.202±0.013g)までとなっているし、中島路可氏が イス ラエルで採取したもの計測したところ0.222±0.02gであった。また国際的な定説もあるので、すなおにカラットの由来はイナゴマメとします。
イナゴマメ
Original book source: Prof. Dr. Otto Wilhelm Thomé Flora von Deutschland, Österreich und der Schweiz 1885, Gera, Germany
イナゴマメ-聖書植物考
聖書植物考 別所梅之助 警醒社書店 発行:大正10年4月
イナゴマメ イナゴマメ
長居植物園 2023年4月30日
樹形
イナゴマメ
長居植物園 2023年4月30日
樹皮
イナゴマメ
長居植物園 2023年4月30日
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