ヘラノキ
解説
ヘラノキ(箆の木)は、学名Tilia kiusiana Makino et Shirasawa ボダイジュやシナノキと同じ仲間です。日本固有種で、奈良県以西、四国、九州の山地に生える落葉高木です。幹は直立し、樹高は10〜15メートル、直径は約40〜50センチメートルです。枝は多く分かれており、繁りがよく、若枝に毛が生えています。樹皮は緑灰褐色で、淡褐色の斑点があります。縦に裂け、老木では鱗状に剥がれ落ちます。
葉は互生し、長さ3〜8センチメートル、幅2〜5センチメートルの卵形〜卵形楕円形で、葉柄は0.5〜1.2センチメートルあり、葉柄や葉脈上に短い毛があります。葉の表面は濃緑色で、裏面は緑色で、葉縁には鋸歯があります。花期は6〜8月頃で、葉柄の基部から長さ4〜5センチメートルの集散花序を出し、十数個の淡黄色の花を下向きに多数つけます。集散花序の基部からは、ヘラ形の長さ3〜5センチメートルの長楕円形の総苞葉が出ます。この苞が特によく目立つため、和名が由来となっているようです。
果実はやや長い直径4〜5ミリメートルの球形で、灰白色の短毛が密生しており、10〜11月に淡褐色に熟します。秋には美しい黄葉が見られます。
用途は、内皮をヘラ皮と称して繊維を採り、布として利用するほか、木材は軽くて柔らかく、細工や家具に適しています。また、薬用や飲料の原料としても用いられることがあります。庭木にも用いられます。この樹木は、日本の奥只見や新潟県の中越地震の被災地に多く分布していることから、被災地の復興に向けてのシンボルツリーとしても注目されています。
葉
樹形