イヌマキ
解説
別名、通称名 槙、マキ、クサマキ、ホンマキ、ニンギョウノキ(大分、長崎)Larqe-1eavedpodocarp
学名: Podocarpus macrophyllusマキ科(podocarpaceae)
名前の由来 名だけでは、誤解や勘違いのおこる木である。
クサマキという名前は、伐採した時に臭いことからつけられたものである。
名前にイヌがついているので、ホンマキ(コウヤマキ)に似ているが、ホンマキより劣るという意味。
しかし、ただマキと呼ぶ場合、イヌマキを指すこともある。そして話をややこしくしているのは、
イヌマキをホンマキと呼ぶ地域もある。
日本書紀に、須佐之男命が「マキを棺材に」と言ったというのは有名な話だ。
これは水に強いことやシロアリに強いことが、当時としては土の中に埋める棺おけ
に最適だったのだろう。
またこのマキはイヌマキでという説がある。しかし実際に出土している
棺おけはコウヤマキのようである。
分布、産地 本州、四国、九州、台湾、中国南部。
蓄積は多くない。同類の木は世界には多くある。アジアにも同属のものがある。
それらのものが少量ではあるが輸入されている。
変種にラカンマキというもの(var.maki)があり、庭木としてはよく知られている。
あまり大きくはならない。
木材の性質 心材と辺材の色の差はほとんどなく、木材の色は褐色を帯びた黄色から暗褐色である。
年輪は注意しないと見にくい。肌目は精で、木理は通直。加工性は切削などは容易な方である。
大木になると二十メートル近くになり、巨樹巨木の類になるものもある。
用途 建築、器具なとに使われる。
保存性か高く、湿気にも強く、白蟻にも強いので、沖縄や奄美では一級の建築材である。
またこの木は暖地の海岸沿いでは、防風林や生け垣にもよく使われる。 千葉県九十九里の屋敷をぐるりと囲む生け垣は、マキ塀と呼ばれ、名高い。 比重0.48~0.65で、針葉樹としてはやや重く、硬い。 実晩秋に緑色に熟し、ブドウのような白い膜に被われる。この花托は熟すと赤や紫になり、甘い。 正岡子規もバナナやパイナップルや桑の実と並べて、「うまい」と書いている。井上靖の『あすなろ物語』はヒノキとアスナロとヒバの関係でよく話題に上るが、実は
このイヌマキにも関係している。この小説から「明日はヒノキになろうと毎日毎日いくら願ってもヒノキになれない」という話ばかりが
先行し、これに対しては私自身異論が大いにあるが、井上靖が育ち、小説の舞台なった伊豆のことを
調べてみると、この地方ではアスナロと呼ばれているのはイヌマキだったのである。
井上靖はアスナロという木について書き、ヒノキに近いものと考えたが、後日アスナではなく「ひば」で
あることがわかったが、もともとアスナロではなくイヌマキだったのである。
花
葉
2003年5月12日
実
2015年5月3日
大阪市立大学付属植物園 2015年5月3日
表皮
大阪市立大学付属植物園 2015年5月3日
刈り込みした樹形
観賞樹として改良されたもの スカーレットバッド
在来のいぬまきの枝変わりであり、樹形は分幹状となる庭園向きの品種である。樹形は分幹状、冠形は半球体、高さは低木である。通直性は直、完満性は中間、真円性は正円、心材及び辺材の色は淡黄、樹皮の色は浅赤茶、き裂紋様は荒波である。枝の太さは細、長さ、着生角度及び枝付き密度は中、新梢の色は鮮紫ピンク、2年枝の色は濃黄緑である。葉の全形は皮針形、先端の形は鋭尖頭、断面の形は偏平、基部の形は鋭形、長さは短、幅は中、新梢の葉色は明赤紫、斑の発生位置は無である。性別は雄、雄花の色は淡黄である。生長性は遅、発根性及び自然落枝性は中である。在来いぬまきと比較して、樹形が分幹状であること、新梢の色が鮮紫ピンクであること、新梢の葉色が明赤紫であること等で区別性が認められる。
昭和50年に育成者の庭園(鹿児島県曽於郡末吉町)において、在来のいぬまきの中から枝変わりを発見、以後、増殖を行いながら特性の調査を継続し、平成9年にその特性が安定していることを確認して育成を完了したもの。
農林水産省の品種登録データベースより 登録2002年 3月 25日 品種登録の有効期限 25 年
巨樹
西方寺のイヌマキ 2020年9月26日
鹿児島県姶良郡蒲生町 御仮屋犬槙 2007年11月18 日
兵庫県豊岡市 鎌田のイヌマキ 2011年11月27 日
テレカ
関係リンク イタマキの巨樹・巨木
西方寺のイヌマキ 大阪府堺市 |
日吉神社のイヌマキ 福岡県 |
鎌田のイヌマキ 兵庫県