シダレザクラ枝垂桜、別名はイトザクラ(糸桜)、シダリザクラ、ベニシダレ。英名はWeeping cherry(一般的な呼び方)、Weeping Cherry Blossom(桜を強調した表現で、特に花の美しさに注目する場合に )、Weeping Higan Cherry(シダレザクラがエドヒガンの変種であることを反映した呼び方 )、Weeping Japanese Cherry(日本原産の桜であることを明示した表現)
学名は栽培品種や分類の仕方によって異なる場合があります。一般的には以下の3つの学名がよく用いられます:
Prunus pendula(シダレザクラ全体を指す場合に用いられることがあります)、Prunus itosakura var. pendula(エドヒガンの枝垂れた変種を指します)、Prunus subhirtella var. pendula( 園芸品種としてのシダレザクラを表す場合に見られます)
シダレザクラは、バラ科サクラ属に属する落葉高木で、枝が垂れ下がる特徴を持つ桜の総称です。その中でも特にエドヒガンの変種やその園芸品種が知られています。観賞用として日本各地の公園や寺社に植えられ、多くの名所でその美しい姿が楽しまれています。
シダレザクラの代表的な種類には、エドヒガンから派生した栽培品種である「シダレザクラ」や「ベニシダレ」、「ヤエベニシダレ」などがあります。また、エドヒガンとマメザクラの交雑種「ウジョウシダレ」や、野生種のオオヤマザクラやカスミザクラから派生した品種も含まれます。これらの桜の枝が垂れる理由は、植物ホルモンであるジベレリンの不足によって枝の上側の組織が十分に硬くならず、重力に耐えきれないためとされています。この枝垂れ性は遺伝的に潜性であるため、シダレザクラの子でも枝垂れない個体が生まれることがあります。
シダレザクラは、平安時代には「しだり櫻」や「糸櫻」として記録されており、これが現在のシダレザクラの祖先と考えられています。現在のシダレザクラは自生地がなく、観賞用として栽培されてきました。種子や接ぎ木、挿し木による増殖を経て、日本全国に広がりました。京都の円山公園や福島の「三春滝桜」、東京の六義園などはシダレザクラの名所として知られています。
花は3月下旬から4月上旬にかけて開花し、淡紅色や白色の小輪の花が枝から2~4輪ずつ垂れ下がります。花弁は5枚で、先端が少し裂けた形状をしています。花の色や形、大きさには個体差があり、満開時には真っ白に見えることが一般的です。花の後には小さなサクランボが実り、5~6月頃に黒紫色に熟します。葉は細長い楕円形で、縁に細かなギザギザがあります。幹は年を重ねるごとに太くなり、樹齢を重ねた木では直径が1メートル以上に達することもあります。
シダレザクラを育てるには、冷涼な気候と日当たりの良い環境、適度に湿った土壌が必要です。乾燥を嫌うため、植える際には腐葉土を加え保湿性を高めるのがよいとされています。また、優雅な枝垂れを維持するために広いスペースが必要で、寺社や公共スペースで見られることが多いです。樹齢が長いため、長期的な管理が必要です。病害虫を防ぐためには通風を確保し、不要な枝を剪定するなどの手入れが重要です。ただし、花は前年に伸びた枝に咲くため、秋以降に剪定を行うと翌年の開花が妨げられることがあります。
シダレザクラの象徴的な存在として、樹齢約1000年を誇る福島県の「三春滝桜」が挙げられます。その幹の周囲は9.4メートルにも達し、国の天然記念物に指定されています。このように、シダレザクラは日本の自然美と文化を象徴する特別な存在として、長く人々に愛され続けています。