ヒノキ科クロベ属。クロベは木材になるとネズコという名で呼ばれています。
北米など世界に5種あり、日本にはクロベの1種がある。黒部杉ともいわれ、富山県の黒部地方に特に多いのかというとそうとも限らず、東北、関東および中部地方の 中央山地と裏日本には全般的に分布する。また、四国の山地、近畿、山陰などにも点在しています。しかし、ヒノキやスギと異なり植林された所がなく、天然木であるため、木材としての生産量は少ない。長野ではヒノキやサワラと混生し、他にアスナロやコメツガと混生している所も見られる。温帯林内でヒメコマツ、コメツガ、ブナ、ミズナラなどと混交する。ヒノキやサワラにくらべ寒地によく耐え、やせ尾根や 岩の間でもよく育つタフな木である。高山の高木限界以上では低木形となり、ハイマツと混生する。木曽地方で、クロベはヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキと混交し、合わせて木曽五木といわれる。
樹木として立っている時は葉っぱ等がヒノキと似ており黒桧という当て字をされる。
雌雄同株で、花は5月中旬に開き、前年の小枝のつく、。球果は1㎝ほどの楕円形で、10月頃に成熟して黄褐色になり、葉の元端にまとまって実る。
クロベの葉にはニオイヒバほどの芳香はないですが、揉むとパイナップルのような香りがします。ヒノキと樹や葉の形がよく似ている。葉裏が白いアスナロが白檜(シロヒノキ)と呼ばれるのに対し、クロベは葉裏の気孔帯が余り白くないので、黒檜(クロヒノキ)と呼ばれる。葉は鱗片状でそれが瓦のように重なりながら上十字形に交互に対生し、ヒノキよりも大きく、アスナロよりも小さい。上面は濃緑色で腺点があるが、下面には白色の狭い気孔線がある。ヒノキは葉がパッと拡がって いる感じですが、クロベはよれてしなだれたように見える。
樹皮は褐色をしており、桧皮(ヒノキの皮)のように長くうすくはげ落ちます。
クロベの樹幹は直立すていますが、天然木である為か、中にはよじれたり幹が分かれたりしているものも見られる。 大きなものは高さ25-30m、地上2m付近で数本の枝に分岐することが多く、水平に多数開出する。直径は40-60㎝、太いいものでは直径80㎝にもなることがある。年輪幅が狭い木で、樹齢数百年という樹も残っている。シルエットもヒノキに似て、枝下が長く枝は細く、先の円い円錐形の樹冠をしている。
心材は黒ずんだ褐色、 辺材は白色とはっきりしている。板目から見ると、神代杉にも似た美しい木目があらわれることも多く、天井板としてよく利用され、耐久性が高く、軽軟で加工しやすく狂わないので建材、器具材などに使われる。
材質としては軽く軟らかくその上ヒノキに似て水にも虫にも強い良材であるが、加工の時に細かい粉をふいたようになり易く仕上げが多少難しいようである。
高山の重要文化財、高山の豪商吉島家の家はその住宅を飛騨匠の技術で再建され、今でもそのすばらしさを見ることができる。その中心的な部屋である本座敷の天井にはなんとも見事としか見えない迫力のある杢のネズコが使用されている。
クロベの別名ネズコは、心材がくすんだネズミ色をしていることに由来する。ネズコ属の英名はarbor vitae(生命の木)で、16世紀初めに北アメリカのセントローレンス川を発見した探検隊が壊血病に悩まされたとき、ニオイヒバの葉の搾り汁を飲んだところ病気が治ったという話に由来する。
中川木材産業で発売している銘木カード(名刺)はこのネズコを利用している、発売以来35年以上のロングセラーです。
また下駄 の材料としても現在でも利用されていjます。桐の下駄は有名ですが、ねずこの下駄は履き心地も良く、桐下駄や塗り下駄とは異なった趣があります。下記写真は長野県朝日村の 三村木工さんのネズコ下駄です。