v11.0
- ID:
- 43070
- 年:
- 2018
- 月日:
- 1105
- 見出し:
- <ひと物語>国産材 良さ五感で 「木力館」館長・大槻忠男さん
- 新聞名:
- 東京新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201811/CK2018110502000152.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
建物に入ると、木材の心地よい香りが漂ってきた。
「国産の天然材だけを使って建てている。
木の良さを五感で感じてほしい」。
さいたま市岩槻区にある木の博物館「木力(きりょく)館」の大槻忠男館長(81)は、誇らしげに館内を見回す
木力館は、大槻さんが創業した木材卸売業「大忠」の敷地内にある。
上から見ると六角形の形が特徴的な二階建ての建物。
ポプラ、スギ、カエデ、マツ…。
柱に使う丸太は、一本ずつ種類が違う。
らせん階段もテーブルも、書類を入れるケースまで全てが木製。
まさに建物自体が博物館だ
「においをかいでみて」。
大槻さんが樹齢三十年ほどのヒノキの板を差し出してきた。
水を吹きかけると、木の香りが際立つ。
次に渡されたのは樹齢八十年を超えたヒノキ。
同じ材料なのに、香りはより強くなった。
「全然違うでしょ。
香りは文章や映像では表現できない。
ここに来て体感してもらわないと」
自身も木と触れ合い続ける人生を送ってきた。
宮城県の農家の次男として生まれ、地元の高校卒業後に東京都内の材木店に就職した。
最初から木が好きだったわけではない。
「住み込みで働けて飯を食わしてくれるところなら、どこでも良かった」
北海道から鹿児島まで全国各地を回って材木を仕入れる日々。
寸法を体で覚えるところから始まった。
木と向き合う時間が長くなるうちに、木材の奥深さにのめり込んでいった。
一九六七年に独立し、四年後に旧岩槻市で「大忠」を創業。
縁もゆかりもない土地で、ゼロからの出発だった。
地元の大工との関係作りから始め、次第に会社の規模を拡大していった。
上から見ると六角形の形に造られている「木力館」
写真
そうやって半世紀以上も木材と関わるうちに、新たな思いが生まれてきた。
「国産の木材の魅力をもっと発信したい」。
ハウスメーカーが造る家が増え、材料も輸入木材や化学物質が主流になってきた。
国内の林業が衰退していることにも危機感を抱き始めていた。
会社の経営から退いたのを機に「木力館」の建設に着手し、二〇〇六年にオープンした。
最近は毎日のように見学者が訪れ、小中学生の団体客を案内する機会も多い。
遠方の県の建築士会など「プロ」の視察も相次いでいる。
今は、岩槻区内に新たな自宅を建築中だ。
使うのは全て国産材。
雨戸も木を使い、風呂もヒノキ風呂だ。
「やっぱり日本の気候風土に合うのは国産材の家。
こっちも多くの人に見てほしい」と完成を楽しみにしている。
(井上峻輔)
<おおつき ただお> 宮城県出身。
高校卒業後に上京し、材木店勤務を経て1971年に旧岩槻市で材木会社大忠を立ち上げた。
87年に岩槻市議会議員に立候補し初当選。
4期16年務め、議長も経験した。
木力館はさいたま市岩槻区新方須賀558の2。
電048(799)1560。
年中無休(盆と年末年
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