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ID:
41576
年:
2018
月日:
0523
見出し:
山口県長門市。
道の駅内にある“木育”の交流拠点「長門おもちゃ美術館」
新聞名:
HOME'S PRESS(
元UR(アドレス):
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00772/
写真:
【写真】
記事
山口県西北部、日本海に面した長門市 “海上アルプス”と呼ばれる青海島をはじめ、山海の景勝地や数々の温泉を擁する。 近年は、岬に並ぶ赤い鳥居が圧巻の、元乃隅稲成(もとのすみいなり)神社が外国人観光客に人気だ。
自動車のCMで話題を呼んだ、エメラルドグリーンの海に架かる角島大橋も近い 左上:長門おもちゃ美術館にほど近い青海島 右上:仙崎に生まれ育った童謡詩人・金子みすゞの記念館 左下:元乃隅稲成神社。
アメリカのニュース専門放送局・CNNによる「Japan’s 31 most beautiful places “日本の最も美しい場所31選” 」に選ばれた。
右下:隣市・下関市の角島大橋もほど近い(写真:長門市) 左上:長門おもちゃ美術館にほど近い青海島 右上:仙崎に生まれ育った童謡詩人・金子みすゞの記念館 左下:元乃隅稲成神社。
アメリカのニュース専門放送局・CNNによる「Japan’s 31 most beautiful places “日本の最も美しい場所31選” 」に選ばれた。
右下:隣市・下関市の角島大橋もほど近い(写真:長門市) 市初の道の駅「センザキッチン」にオープンした「長門おもちゃ美術館」 長門市の海辺に位置し、童謡詩人・金子みすゞの故郷として知られる仙崎に、このほど市内初の道の駅「センザキッチン」がオープンした。
新鮮な魚介類や採れたての野菜、その加工品などが買えるのはもちろん、その場で焼いて食べられるバーベキューコーナーも併設している。
ほか、和食レストランや定食 屋、コーヒースタンド、ベーカリーなど多彩な店舗が入居する。 なかでもユニークなテナントが、木の香に包まれた「長門おもちゃ美術館」だ。
「東京おもちゃ美術館」の姉妹館で、良質な木のおもちゃを通じて木に親しみ、木の文化を学ぶ、“木育”を標榜している。
特にここ長門では、館全体が、地元の森の植生を体感する、遊具のような起伏ある空間になっているのが特徴 だ 上2点:センザキッチンの農林水産物等直売所・レストラン棟 下2点:長門おもちゃ美術館。
(写真:長門市) 上2点:センザキッチンの農林水産物等直売所・レストラン棟 下2点:長門おもちゃ美術館。
(写真:長門市) 長門の豊かな森の恵みを次代に伝えたい。
“木育”を掲げて官民が協働 上:左から、シンラテック専務・伊藤直也さん、建築家・伊藤立平さん、シンラテック社長・近藤友宏さん。
下:左から、NPO「人と木」理事長・岩本美枝さん、長門市農林課・永尾和彦さん 上:左から、シンラテック専務・伊藤直也さん、建築家・伊藤立平さん、シンラテック社長・近藤友宏さん。
下:左から、NPO「人と木」理事長・岩本美枝さん、長門市農林課・永尾和彦さん それにしても、なぜ“道の駅”で“木育”なのか 長門市の森林率は75%で、日本全体の67%を上回る。
なおかつ、全国でも珍しいシイノキの群生地帯だ。
それなのに林業家は少なく、森林の活用度は低い。
そこで長門市では、公共建築に木を取り入れると同時に、“木育”を通じた子育て環境の整備、仕事づくりや人材育成を目指している。
新しく道の駅を つくるにあたっても、建物に木を使うだけでなく、“木育”と地場産材PRの一石二鳥を狙った。
そのためのアイデアを求められたのが、市内で林業・製材業を営むシンラテックの近藤友宏さんだ 近藤さんは地場産材のなかでも特に、シイノキをはじめとした広葉樹の活用・付加価値向上に力を入れている。
広葉樹にはフローリングや造作材として高級なイメージもあるが、実は国産広葉樹の約95%は製材や合板ではなく木材チップに使われている。
安価でしか取り引きされないので、活用度も下がりが ちだ 「このあたりでは森林面積の5割を占める広葉樹が“雑木”と呼ばれて放置されています。
しかし、木も人間と同じで、年をとると光合成の力が弱まってCO2の吸収量が減り、虫害にもあいやすくなる。
ある程度大きくなったら伐って使い、次世代の木が育つようにしなければ、やがて森そのものが衰えてしまいます」 (近藤さん) 多様な木の生態を子どもたちに伝えることは、近藤さんの思いにも叶う。
道の駅で何ができるか模索していた時に出会ったのが、“木育”を掲げる「東京おもちゃ美術館」館長の多田千尋さんだった。
ここから、長門市における姉妹館建設の動きが始まる。 2016年5月に、市内の林業・木材産業・木工・子育て支援・デザインなどの関係者が中心になってNPO「人と木」を設立。
同年11月に長門市と「人と木」、「東京おもちゃ美術館」の3者で“木育”推進の意思を表明する「ウッドスタート宣言」を行った。
「人と木」は、「東京おもちゃ美術館」の支援を受けながら、「長 門おもちゃ美術館」の設立を目指すことになった。 美術館は土産物屋をリノベ。
廃船寸前の船をクラウドファンディングで改修 「長門おもちゃ美術館」は市の施設だが、予算は潤沢とはいえない。
建物はセンザキッチンの敷地内に残っていた築30年の土産物屋を買い取り、改修して使うことになった。
設計を手掛けた建築家の伊藤立平(たっぺい)さんは語る。 「もとの建物は海の眺めを遮るように建っていました。
そこで、外壁を剥がして外周をガラス張りにし、建物の海側と陸側、両方から見通しが利くようにしました。
屋内を仕切っていたシャッター・間仕切り・天井はすべて撤去し、館全体をひとつながりの空間にしています」。
さらに、家型の細長い空間を南北に増築し て内外をつなぎ、建物の周囲に木の回廊を設けた。 海側のデッキには浮き桟橋が接続されており、ここから“キッズクルーズ船”が就航する。
遊覧船は、地元の観光汽船が提供してくれた廃船寸前の船をリフォームしたものだ。
改修資金は「人と木」がクラウドファンディングで集めた。
理事長の岩本美枝さんは「北海道から沖縄まで、280人もの支援が得られ、40 0万円の目標が達成できました」と語る。
木のぬくもりに包まれながら海上を巡る、オリジナリティあふれる“水上おもちゃ美術館”が完成した。 おもちゃ美術館の名物コーナー「木のたまごプール」を満たす木製のたまごは、「人と木」の指導のもと、市民の手でつくってもらったものだ。
地元の養鶏組合が出してくれた協賛金で、中学生は1人2個、小学生は1人1個製作。
市内各地で開催したワークショップでは、参加者が1人500円払って2個つくり、1個に 自分の名前を入れて美術館に寄付した。 現在、美術館は「人と木」の独立採算で運営されており、市の補助金は入っていない。
「長門おもちゃ美術館」は、地域の人々の手づくりで生まれ、成り立つ“市民立”の施設なのだ 左上:キッズクルーズ船“弁天” 右上:浮き桟橋(以上2点の写真提供:長門市) 左下:クラウドファンディングで支援してくれた「一口船長」の名前を刻印した積み木。
支援者の手元に届いた親子くじらの積み木がはめ込めるようになっている 右下:館内の「木のたまごプール」(写真:山田圭司郎) 左上:キッズクルーズ船“弁天” 右上:浮き桟橋(以上2点の写真提供:長門市) 左下:クラウドファンディングで支援してくれた「一口船長」の名前を刻印した積み木。
支援者の手元に届いた親子くじらの積み木がはめ込めるようになっている 右下:館内の「木のたまごプール」(写真:山田圭司郎) 地元の木約10種を使い分け。
美術館の中に森の植生と特徴的な地形を写す 「長門おもちゃ美術館」の内外を構成する木材は、長門市を中心に半径約50キロ圏で採れたものばかり。
スギ、ヒノキ、シイノキのほか、カシノキ、タブノキ、クスノキ、ナラ、ケヤキ、サクラなど約10種類の木が、それぞれの特性に応じ、“適材適所”に使われている。
「樹種の割合も、できるだけ地元の植生に 近づけるようにしました」と、前出の伊藤立平さん 建物のファサードを飾る木のアーチ壁は、“母屋角(もやかく)”と呼ばれる汎用性の高い9cm角の用材を切って重ねてつくっている。
壁の下のほうには堅くて腐りにくい広葉樹を、上のほうには雨に強く、軽いスギを使った。 館内をゆるやかに仕切る丸棒の列柱には、樹種による強度の違いが反映されている。
「針葉樹は広葉樹より柔らかく、同じ直径だと広葉樹より曲がりやすい。
そこで、短い柱に針葉樹、長い柱には広葉樹をと使い分けています。
こうすることで、長さが違う柱を同じ間隔で並べても構造が成り立つんです」(伊藤 立平さん)。
こうした使い分け方は、同じ山口県内にあり、伝統的な木造文化を伝える岩国の錦帯橋にもヒントを得たという。 共同設計のシンラテック・伊藤直也さんは、館内の造作と周辺地形との関連を解説してくれた。
「館内を仕切る木の段丘は、目の前に見える青海島の急峻な岸壁や入江、洞窟などの特徴的な風景を模しています。
子どもたちがここを昇り降りするたびに、窓の外の山や海が見え隠れします。
段丘頂上の道 は“シイノキ峠”。
手すり代わりの丸棒に触れながら通り抜ければ、地元の森の植生を追体験できます」。
海を望む階段状の桟敷は、地域のシンボル“赤崎神社”の野外劇場“楽桟敷”をイメージしてつくった。
イベントの客席に使うなど、多目的な利用を想定している。 美術館の入り口付近には香り高いヒノキ、赤ちゃんコーナーには温かく柔らかい感触のスギ、子どもたちが駆け回る広場には頑丈なシイノキ、と床材も使い分けた。
「海辺のウッドデッキにも広葉樹を使いました。
従来はセランガンバツなどの外洋材を使うことが多かったのですが、国産材だって性能では負けて いません」(伊藤直也さん) /dd>
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